WHISKY DAISKY ! #5

2011年に復活
中央アルプスの山麓に抱かれた蒸溜所
「本坊酒造 マルス信州蒸溜所」

Text: 浅井直子
Photo: 佐藤学 

2011年に蒸留を再開。2014年に導入した新たなポットスチルは、日本のウイスキーの勃興に深く関わった人物の設計によるものです。

※写真は本坊酒造・マルス信州蒸溜所・所長の竹平考輝さん。「自分たちが信じていいものを造れば支持してもらえる」をモットーにウイスキー造りに取り組む

「岩井式ポットスチル」を携えて、
19年の眠りから完全復活

豊かな緑と野鳥のさえずりに囲まれた「マルス信州蒸溜所」は、1949年、鹿児島でウイスキーの製造免許を取得した本坊酒造により設立。代表銘柄の名前の由来である「駒ヶ岳」を擁する中央アルプスの山麓に位置しています。こちらは、日本ウイスキーの黎明期に深く関わった岩井喜一郎氏を、顧問に迎えた蒸溜所としても知られ、敷地内には、今は亡き岩井氏が設計した初代のポットスチルが。

「地ウイスキーブームの1985年に山梨より蒸溜設備を移設し、マルス信州蒸溜所を竣工。その後、全国的にウイスキーの消費が落ち込み、1992年には蒸留を休止。19年の年月を経て、2011年に再開。2014年には新たなポットスチルを導入しましたが、それは、岩井氏の設計したポットスチルをしっかり受け継いでいます」と、説明するのは、所長の竹平考輝さん。岩井氏が残したマニュアルに向き合い、「一体、岩井氏はどんなウイスキーを造りたかったのだろう?」と再開時から探りながら取り組んでいると言います。例えば、蒸留を左右するポットスチルの形状や大きさひとつとってもそうです。

「ポットスチルはとても特徴的。ストレートスワンネックはやや重めの酒質を狙ったもの。ボディの形状を見ると深い味わいを生み出したかったようですが、冷却器に入る直前の部分を細く絞っているので、素材の銅に接触する率が高まります。となると、最終的には軽やかでクリーンな味になるんです。複雑ですよね(笑)」。とは言え、「蒸留はウイスキーの面白さではあるけれど、すべてではない」と、竹平さん。

「もちろん、ニューポットとなるウイスキーのカットポイントをどこにするか、あれこれ考えます。でも、ウイスキーは原酒造りに1週間。その後、樽で熟成させる月日の方が圧倒的に長い。樽の素材、場所、その年の気候によっても酒質は変動するので、最終的には自然と対峙しながら、委ねるところは委ねます。自然と時と人の力を生かしたマルスウイスキーの挑戦が続いています。蒸留の火を絶やさぬよう、未来を造って、過去を売るウイスキーの魅力を届けて行きたいですね」。

初代岩井式ポットスチル

清らかな空気に包まれて眠る樽

中央アルプスの山麓に抱かれたマルス信州蒸溜所。左のウイスキーの名前「越百」は、その山の一つ「越百山」から。複数のモルト原酒をブレンドしたもので、ハチミツを思わせる甘い香りの中に、ほのかなスモーキーフレーバーと熟した果実の香りが広がり、口当たりは柔らかく、優しい余韻が特徴です。

本坊酒造 マルス信州蒸溜所

「本坊酒造 マルス信州蒸溜所」
長野県上伊那郡宮田村4752番31
TEL:0265・85・4633
営業時間:9:00~16:00(15:30最終受付)

蒸溜所見学は電話、もしくはHPより予約可
https://www.hombo.co.jp/

Photo 佐藤学 Text 浅井直子

※こちらの記事は2017年6月20日発行『メトロミニッツ』No.176に掲載された情報です。

更新: 2017年6月20日

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