いま・ここにある「食」の話 #5
「フロリレージュ」オーナーシェフ

川手寛康さんが考える、
フードロスのこと

Text: 編集部
Photo: 小林秀銀

川手寛康 HIROYASU KAWATE
1978年、東京生まれ。「カンテサンス」のスーシェフを経て、2009年に「フロリレージュ」をオープンさせる。2017年度のアジアベストレストラン50で14位を獲得するなど、世界的にも注目を集める。

日本人1人1人がロスを減らせばきっと世界が救われる。今、川手さんが考えていること。

2017年5月、宮崎市で開催されたDiningOut(日本に眠る魅力を国内外に発信していくプレミアムな野外レストラン)に参加して、宮崎市や綾町がすごく魅力的な土地だったと語る川手さん。聞けば、そこは「フードロス」が少ない土地とも言えるそうです。

宮崎県の綾町は有機の農家さんたちが集まっている地域で、行ってみて本当に素晴らしいなと思いました。別に農薬を使うのがダメという話では全然なくて、農薬を使わない農家が1軒しかないと、虫が出たら、お前のせいだろうとなるでしょう。でも、皆が使わなかったら、「そっちでアブラムシ出たの。うちも出てるんだよ」とわかり合える。責任転嫁しないで済むんです。農薬が悪いとは思いませんが、有機・無農薬の農家さんって日本に数パーセントしかいないんです。少数派だからこそ頑張ってて、僕らが応援してあげなかったら姿を消してしまう可能性すらあります。だから、曲がった野菜もおいしいでしょうと僕らがその価値を発信することが大切だと思うんです。

そんな曲がった野菜は、フードロスの問題(まだ食べられるものが捨てらてしまう状況)にもつながります。この社会は様々な問題がありすぎて、1つ1つ挙げていたらきりがありませんが、中でも、僕が今一番取り組んでいるのはフードロスの問題です。これから地球上は100億人超のとんでもない人口になってくるわけで(現在は約74億人)、食糧が足りなくなって飢餓が進むと言われています。

日本人は世界で起こっている問題に対して蚊帳の外という風潮がありますが、日本は世界一のフードロス大国。日本のフードロスは年間600万t以上。その600万tを地球上で平等に分配できたとしたら、ものすごい数の人たちを飢餓から救うことができるわけで、知らない・興味がないというわけもいかないでしょう。

ただ、日本がフードロス大国である理由は、生産地の問題が大きくのしかかっています。日本の生産物には厳しい規格があり、規格外の野菜はなかなか引き取ってもらえず、捨てられてしまいます。食べ残しに限らず、産地での廃棄もフードロスになるのです。無駄ですよね。

でも、世の中の無駄は、実はただ無駄に存在しているわけではありません。僕たちが食品を捨てることで、どこかに利益が上がっているような仕組みがある。経済が豊かな国には、無駄が存在するものなのです。貧しい国なら経済的に無駄がないかと言えば、無駄を作る余裕がないから利益を生み出せません。

ということは、日本は無駄を減らしていくと、もしかしたら経済が落ち込む可能性があるわけです。しかし、日本人はすぐに「不景気だ」と言いますが、考えてみるとすごく潤っていたバブル時代ってわずか5年間のこと。その頃と比べて「今は不景気」と言っても、バブルを知らない僕たちにはもはや不景気だとも感じません。

だったら、もう少しだけ皆で何かを我慢して、世界に対してお手本のような国になることを目指しませんか? 1人1人が意識をほんの少し変えるだけでも事態は動き、世の中に新しい価値観をきっともたらすことができると思うのです。

宮崎県 綾町
川手さんが素晴らしいと言う綾町は、宮崎市からは西に約20㎞、県のほぼ中央に位置する、綾北川と綾南川に囲まれた中山間地。日本最大級の原生的な照葉樹林を擁し(町の約80%!)、そして町を挙げて有機農業に取り組み始めたのは40年も前からという、唯一無二の魅力を備えた土地です。

Photo 小林秀銀

※こちらの記事は2017年7月20日発行『メトロミニッツ』No.177に掲載された情報です。

更新: 2017年10月13日

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