いま・ここにある「食」の話 #3

“サステナブルシーフード”って何だ?

Text:編集部
Photo: 柳大輔

「シンシア」オーナーシェフ石井真介さんらが参加している「サステナブルシーフード勉強会」。発起人のフードライター佐々木ひろこさんに、その背景を教えていただきましょう。

※写真は6月20日(火)に行われた、サステナブルシーフード勉強会の様子。深夜0時からのスタートにもかかわらず、仕事上がりのシェフを中心に集まってきた参加者で、会場「シンシア」の店内は満席に。

フードライター佐々木ひろこさんが語る「サステナブルシーフード」

“サステナブルシーフード”をご存知ですか? サステナビリティ、つまり持続可能性は最近よく目にするキーワード。では持続可能な魚って?

サステナブルシーフードとは「獲りすぎない」「海を傷つけない」「漁師コミュニティを守る」方法で獲られた、または養殖された魚介類のこと。またそのムーブメント自体を指すこともあります。この“限りある資源を守り、未来に引き継ごう”という国連発信の考え方は、2012年のロンドンオリンピックで提供された食事に公式導入されたことをきっかけに、今、世界中で大きな注目を集めています。

…と、偉そうに(笑)書き始めたものの、実は私も真剣に学び始めたのは最近のこと。仕事で15年以上も食の現場やレストランを取材してきたのですが、なぜかこれまで海は遠いものでした。ただ「ウナギやマグロが枯渇寸前」「スルメイカ漁獲高が史上最低」というニュースが入ればオロオロし、マグロ初セリの盛り上がりやスーパーの魚売り場の平穏さに「枯渇ってフェイクニュース?」と困惑し、「なんとなく」一人孤独にウナギ断ちをする日々。そんな折、古い友人を通じて世界のサステナブルシーフードの動きを知り、研究者の話を聞き、漁業者を取材する機会を得たのでした。

そうして直面したのは、日本の海が今、かつてないほどの危機にあるという現実です。暖流と寒流が2つずつ交差し、島嶼部周辺も含め四方に広大な大陸棚を持ち、昔は世界一とも言われた豊かな日本の海から、魚の姿が本当に、急速に、消えているのです。

魚が減ったと言うとよく話題に上るのは、近隣諸国の漁獲量増加や温暖化ですが、実際のところ、魚が減った最大の原因はやはり節度を越えた乱獲のよう。残念ながら日本は各国に比べ、国による海の資源管理が遅れているのだそうです。たとえば、太平洋クロマグロ(本マグロ)はもう初期量の2%しか残っていない絶滅危惧種。なのに6-7月の産卵期、卵をたっぷり抱えた母マグロが大量に獲られ安く売られている現状は、きっとこの問題の縮図なのでしょう。

滅入る話が多いのですが、幸いまだ手遅れではありません。上手に漁獲規制を取り入れることで、海がよみがえり漁業が成長産業になった国の例も数多くあります(下のグラフ:大西洋クロマグロは、厳しい漁獲規制を導入して資源が回復し、各国漁獲枠が拡大)。

(上)大西洋クロマグロ、(下)大平洋クロマグロ/多数生息するマグロ類の中でも最大種で、いわば“マグロの王様”。大西洋クロマグロはメキシコ湾・カリブ海、地中海・黒海などの大西洋、太平洋クロマグロは太平洋の熱帯・温帯地域に広く分布する。

海を回遊するマグロの資源管理は、太平洋西側はWCPFC、大西洋とインド洋はICCATとCCSBTという国際機関が行っている。日本が運営の中心的役割を果たしているWCPFCが施策を打てずにいる間に、他2機関は2007年より規制を導入。大西洋クロマグロとミナミマグロの総漁獲枠削減、前者の幼魚や産卵場での漁獲禁止など、厳しく管理をした結果、高い成果を上げている。
※グラフ:「大西洋クロマグロ(東系群)の親魚資源量推移(水産庁)」と「ISCクロマグロ資源評価レポート(2016年)」をもとに作成

未来のために、まずは知ることから

これまでも現在も、多くの専門家の方々がこの問題に取り組み、サステナブルシーフードの概念を広める努力をされてきました。ですが、仕事で日々接するレストラン業界には海の現状を知る人が意外なほど少ない。

ならば、と5月より、シェフに向けたサステナブルシーフード勉強会を試験的に開催しています。東京海洋大学の勝川俊雄先生とシンシアの石井真介シェフがご協力くださり、「まずは知ることから」を合言葉に、漁師や海洋NGOの方々も招いてこれまでに2回を開催。深夜0時スタートというクレイジーな時間にもかかわらず、熱心に質問を重ねるシェフたちの様子に、食の未来に向けた彼らの志を感じます。

まだ豊富に残る魚種を可能な場面で選んで使うことで、枯渇しそうなシーフードを守ることができる。いろんな方と対話を重ね、世論が大きくなれば、解決策が見えるかもしれない。それもこれも「まずは知ることから」。少しずつでも多くの方にサステナブルシーフードを知ってもらうため、私たちにできることを、シェフの皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。

Text 佐々木ひろこ
フードライター・食の翻訳家。アメリカ・ケンドールカレッジ調理師コース、ノースウェスタン大学ジャーナリズムコースを修了。国内外のレストランやシェフ、伝統産業を中心に取材を重ね、フードメディアや書籍などの執筆、食の翻訳も手掛ける

Photo 柳大輔

※こちらの記事は2017年7月20日発行『メトロミニッツ』No.177に掲載された情報です。

更新: 2017年10月13日

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