いま・ここにある「食」の話 #2
「シンシア」オーナーシェフ

石井真介さんが考える
“日本の漁業”

Text:編集部
Photo 三浦咲恵、柳大輔

「シンシア」オーナーシェフの石井真介さんは、フランス料理が大好きで、シェフという仕事に憧れてこの道に進んだと言います。そして、今、仕事をしている中で、自然と考えるようになったのは日本の漁業のことだそうで。ここでは、そんな石井さんに、今、考えていることをお聞きしました。

SHINSUKE ISHII
1976年、東京生まれ。「オテル・ド・ミクニ」や「ラ・ブランシュ」を経て渡仏。帰国後は「レストラン バカール」のシェフを経て、2016年に「Sincére」(シンシア)をオープンさせる

お店を営むという日常の先にある社会の課題を見つけた今、石井さんが考えていること。

僕のベースはあくまでもフランス料理です。目指しているのは、日本にフランスの食文化を日本ならではの形で根付かせること。フランスの食文化が一部の食通と呼ばれる人達だけでなく、どんな人でも身近に楽しめるものになってほしいと考えています。

かつて、僕らの師匠たち世代は、日本でいかに本場と同じような料理を作るかを目指していたと思いますが、日本のフランス料理は本場と肩を並べるくらいまでのクオリティに成長しました。

そんな師匠たちが築いてくれた恵まれた土壌の上にいる僕たちは、さらに新しい、日本ならではのフランス料理が作れるはず。たとえば僕の食関係ではない業界の友人は、フランス料理って面倒臭くない?とか、緊張しながら3時間も飯を食うの嫌だよとか言うわけですよ。

そんな人達にも日常的にフランス料理を身近に感じる環境を作り、次の世代のために僕らも良い時代が築けたらと思っています。また、やはり、今の時代は、社会とつながっていることも重要です。世の中の課題をお客さんにも伝えていくことは僕たちの役目にもなってくると思うのです。

そんな中で、最近、参加している「サステナブルシーフード勉強会」では、日本の漁業の課題が次々と浮き彫りになってきて、いろいろ考えさせられることが多いです。

例えば、サバの文化干し。サバの文化干しが欲しかったらスーパーに行けばいくらでも売っていますが、あのサバはほとんどが北欧産。国産のサバを使った文化干しなど、ほぼないんだそうです。

でも、いつでも目の前にあるから見過ごしてきて、サバの文化干しと言えば日本の食べ物なので勝手に国産だろうと思い込んでいたり、買う時に産地表示まで見ることがない。

実は、絶滅までいかなくても、日本ではサバが獲れにくくなっている現状に気づいていない人がほとんどです。この状況が負のスパイラルで、そのまま忘れ去られていつの間にか絶滅しちゃうかもしれないという流れが今あるそうで、僕ら「食」に携わる人間ですら、その危機的状況に気づいていません。

また、僕は昔からウナギも使っているんですが、ウナギに関しては値段が倍になりました。今、僕が10年前に使った時の倍です。でも、随分高くなってきたなと思ってはいても、それを僕がどうしようとはまずは考えていませんでした。僕ができることと言えば、買う時に「安くして」と言うことぐらいで、ウナギをたくさん増やそうとか、ウナギの稚魚を獲るのは止めようとか、そんなことまで思わないでしょう。

でも、考えなきゃダメだよね、となってきたのが今の時代です。その点ではシェフたちの間では、皆、すごくモチベーションが高く、自分のことだけじゃなく、皆で行動に移そうとつながりを持ち始めています。

2017.06.20.TUE
サステナブルシーフード勉強会@シンシア
写真は、石井さんが参加しているという「サステナブルシーフード勉強会」の様子。一体、この会はどんなものか、その背景にある思いなどをさらにもう少し深掘りしてご紹介できたらと思います。

<#3 | いま・ここにある「食」の話>へ続く

Photo 三浦咲恵、柳大輔

※こちらの記事は2017年7月20日発行『メトロミニッツ』No.177に掲載された情報です。

更新: 2017年10月13日

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