豊食の時代を振り返る
|Tokyo Food Journal[1]|
?序章?

おそらく、今、東京では「食」のブームが起こっています。テレビも雑誌も、インターネットもFacebook上でも、「食」の情報が多くの割合を占めていると感じるからです。しかし、どんな料理が、どんな店がブームなのか?と聞かれれば、これと言ってすぐには思いつきません。例えば、90年代初頭に起きたティラミス大流行の時は、誰もが「一度は食べてみたい」という憧れに取り憑かれましたが、今は街の至る所に〝話題の店?や〝行列店?が目白押し。かつての飽食の時代以来、東京の「食」のグローバル化は加速し、店の業態も料理のジャンルも多様化。新しいものや美味しいものでさらに溢れています。でも、それは「飽食」が進んだということになるのでしょうか。いや、もしかしたら「豊食」の時代…? 例えば、お皿の裏側にある物語も含めて料理を食べるともっと美味しく楽しめるような、東京は、今、私たちの毎日を豊かにしてくれる「食」であふれているとも感じるのです。そこで編集部では、今年の「食」のシーンを一気に振り返り、時代のキーワードをピックアップ。東京の「食」の豊かさを総決算してみたいと思います。2015年最後の特集は「東京フードジャーナル」をお届けします。

2015年1月、〝世界一のレストラン?、東京を席巻する。

「ノーマ・アット・マンダリン・オリエンタル・東京」は、わずか5週間の出来事だった。この1月、日本橋のホテル「マンダリン オリエンタル 東京」に、デンマーク・コペンハーゲンからやってきたレストラン「Noma」(ノーマ)が期間限定で店をオープンさせたのだ。5週間で用意された席数は合計約2,000席。そこに、世界中から6万人以上の予約が殺到した。2015年、東京の「食」のシーンは、ノーマが巻き起こした空前の美食革命から幕を開けた。

自然が息づき、いのちが宿る、ノーマの料理は従来の美食の世界に革命をもたらした。写真は、活きボタンエビに長野県の森林で採取した蟻を散らした「長野の森香るボタンエビ」。寒冷地のため柑橘類が育たない北欧で、蟻はれっきとした食材で、レモンのような酸味を添えてくれる。「ノーマ・アット・マンダリン・オリエンタル・東京」の期間中(1月9日~2月14日)、コペンハーゲン本店は休業し、現地から総勢約70名のスタッフが東京入り。本国と同じクオリティの料理とサービスを振る舞った。

「ノーマ」は、本国・デンマークの人々の価値観を「美食」で変えた革命児。2004年、デンマーク・コペンハーゲンの小さな田舎町に誕生したわずか12卓のレストランだが、これまでに「世界のベストレストラン50」で4回も1位を獲得したこともあり、〝世界一のレストラン?と評されることが多い。何より尊敬すべき点は「ニューノルディック・キュイジーヌ」という料理の新しい潮流を生み出したこと。すべて自国で採れた食材だけを使い、表現豊かでアイデアに富んだ料理を作り上げるというそのスタイルは、今では北欧全体に広がっている。そもそも北欧は、禁欲的なプロテスタントたちが多く暮らし、食文化も伝統的で質素。食への関心も低めで、美食とは無縁の土地柄だった。そんな人々の心に一石を投じたのがノーマ。自国の自然をリスペクトした料理を作り、やがて世界中の美食家たちの目が北欧に注がれるようになると、人々も日々の「食」の大切さに少しずつ気付き始めたのだった。

更新: 2016年9月29日

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