心に響く「時代」や「暮らし」
|100年後まで残したい料理本[10]|

何を隠そう、料理本コレクター
organ 紺野真さんの本棚

丁寧に作られたビストロ料理とビオワインが揃う人気店、西荻窪「organ」。その店内の一角に、思い切り持ち主の趣味が感じられる本棚があります。もちろん料理本もずらりと…。オーナーの紺野さんに聞けば、「実は料理本コレクター」だと告白してくれました。

フレンチだけでなく、スペインやメキシコ、中東など、多国籍な料理からヒントをもらうことも多く、料理本のバリエーションはさまざま。本棚にはほかにも写真集、絵本、小説などが並ぶ。「よく見るとひどいラインナップです」と笑う紺野さん、意外なことにミステリー好き。棚にある東野圭吾著「白夜行」の巻頭には、紺野さんがメモした人物相関図が。感銘を受けた箇所に線を引くなど、素直な人柄がのぞく軌跡があちこちに残されている

今や押しも押されもせぬ人気ビストロ「organ」ですが、オーナー紺野真さんの原点はブックカフェ。学生時代を過ごしたカリフォルニア・ロングビーチの店「TheLibrary」には店名通り本棚があり、誰もが自由に本を読みながら思い思いに過ごしていたのだそう。その光景に憧れ、いつかこんな店をと飲食業界に飛び込んだ紺野さんにとって、本棚の存在は必然でした。

「料理本は数え切れないほど持っています。月に数回代官山『蔦谷書店』へ本を探しに行きますが、フランス料理の棚に新刊が入荷したのがすぐわかるくらい」。

本棚の中でも特に年季の入った1冊が『基本をきわめるフランス料理』。紺野さんが「神様みたいな存在」という「レスプリ・ミタニ」三谷青吾シェフによるレシピ本です。

「料理本のレシピを実際に作ることは少ないけど、これは別。どのレシピも何度も作るし、本当に美味しい」。

店での通称は〝赤本?。スタッフも愛読する、チーム紺野にとっての虎の巻なのです。さて、店では、日曜のまかないにフランスの伝統料理を出すルールがあるのだそう。きっかけは、尊敬する青山「ラ・ブランシュ」田代和久シェフが、同様の「フランス料理の日」を設けていると読んだから。

「レシピ以外の解説やエッセイ的文章にも惹かれます。この本は田代シェフの丁寧な人となりが伝わってきて、読み物として面白い」。

サービスの経験が長く、料理の修行経験が乏しいと感じていた紺野さんにとって、「ベーシックな伝統料理や地方料理は本から学んだようなもの」。これまでを作ってきたものが前の2冊に集約されるなら、これからのヒントになるのがデンマークの北欧料理店「NOMA」のレシピ本。

「最初はあまりに独創的で、『なんじゃこりゃ』って。でも一見凝っているようで、やっていることは実はシンプルと最近わかってきた。僕自身の料理が変わるきっかけをくれました」。

好きな料理本を開く時、紺野さんが感じるのは得も言われぬ興奮。「知的好奇心を刺激されて、ゾクゾクする感じ。そうやってメニューを考えている時が、何よりも幸せなんです」。シェフ人生に大きな影響を与えた3冊はまた、至福の時間の伴侶でもあるのです。

三軒茶屋「ugisu」に続く2号店として2011年オープン。完成度の高い料理と寄り添う、身体に染み入る味わいの自然派ワインが多数揃う

【SELECTED BOOKS】

「NOMA ノーマ ー 北欧料理の時間と場所」
レネ・レゼピ著 PHAIDON・刊 7,517円
「世界のベストレストラン」No.1のコペンハーゲン「NOMA」の初めての本。革新的で独創的な料理のレシピや、スカンジナビア独自の食材を紹介するシェフ日記などを掲載する

「ラ・ブランシュ 田代和久のフランス料理」
田代和久・著柴田書店・刊 4,212円
1986年に青山「ラ・ブランシュ」を開店以来、真摯な姿勢で多くのシェフに慕われている田代シェフのスペシャリテ45品を、コメントとともに紹介。料理への様々な思いも綴られる

「基本をきわめる フランス料理」
三谷青吾・著 柴田書店・刊 3,456円
フランス料理店のメニューに欠かせない定番70余品のレシピを収録。恵比寿「レスプリ・ミタニ」の三谷青吾シェフにより、素材の味の本質を引き出す技術を分かりやすく解説

organオルガン

organ

住所:
東京都杉並区西荻南2・19・12 1F
TEL:
03・5941・5388
営業時間:
17:00~24:00(23:00LO) 月、第4火定休

Photo 菊池良助 Text 唐澤理恵
※こちらの記事は2014年9月20日発行『メトロミニッツ』No.143に掲載された情報です。

更新: 2017年5月10日

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