ふるさとを思い出す家庭の味

|日本の家庭料理[15]|
一度は訪れたい郷土料理の店「名店5軒」

東京には多くの「郷土料理の店」がありますが、こちらでご紹介するのは地元の人が多く集まるお店です。東京に居ながらにして、それぞれの土地の味、空気さえも感じられる、そんな郷土料理の名店は地元でなくてもなんだか懐かしさを感じてしまうものです。

和歌山県

|1軒目|【かっぱ】(学芸大学)

〝早なれ?から〝良くなれ?まで日ごとに熟す紀州の熟れ寿司

専用の木箱で重しをかけて熟成させた熟れ寿司を取り出す、女将の卯川さん

和歌山の〝熟れ寿司?は日本三大熟れ鮨に数えられるそうですが、「うちのは代々家庭に伝わってきたもの。魚を酢で〆て、酢飯と一緒に笹に包んで熟成させます。3 ~ 4日で〝早なれ?、それ以降は〝良くなれ?と呼ばれていて、香りも味わいも濃厚です」と、女将の卯川芳子さんが教えてくれました。海老、鯛など常時数種類ある熟れ寿司の中でも定番は「さばの熟れ寿司」で、この日いただいたのは8日目。鯖の身がとろけるような舌触りで、酢飯ももっちりと弾力が増し絶品です。また忘れてはならないもうひとつの名物が「いわしの梅干し煮」。じっくり煮込んだ鰯は骨まで食べられるやわらかさで、紀州南高梅の梅干しの酸味で口内がさっぱり。これらを肴に、ずらりと揃った和歌山の日本酒を味わえば、まさに至福の時間!

いわしの梅干し煮(2本500円)に載せる梅干しは、紀州南高梅の名産地である和歌山県田辺市のものを取り寄せているそう。ちなみに 「まっとおくれ」は和歌山弁で「もっとください」の意味

笹を付けたまま、およそ3等分に切られて提供される熟れ寿司。 写真のさば(1本300円)のほか、ます(同300円)、た い(同350円)、あじ(同350円)、えび(同450円)の全5種があります

かっぱ[学芸大学]
03・3710・3711
東京都目黒区中央町2・28・9
17:00 ~ 23:00 LO 日定休(祝日は休みの場合がある ので要確認)

山形県

|2軒目|【おば古】(銀座)

勝手ながら、誰かを招きたくなる銀座の山形、第2の我が家!?

1952年に「おば古」を創業したのは女将・大内瞳さんのお母さん。山形県出身で当時から「堅苦しくなく、季節や行事に合わせた山形の家庭料理」を提供しており、大内さんが現在その想いを引き継いでいます。例えば「弁慶飯」。酒と細かくしたかつお節を混ぜた〝弁慶味噌?を塗った焼きおにぎりなのですが、「よく山形の祖母に握ってもらいましたし、子どもたちに作ってあげるととても喜んでくれるんですよ」。そしてランチのコースでは最初に出てくる「むきそば」。「二日酔いでもさらっと食べれて食欲が出てくるでしょ」。てんぷらや焼き物などの割烹料理とともに供される、素朴な料理もさることながら、なんとも温かい女将の心遣い。常連さんが常連さんを呼び、さらには親子2世代で通う人もいるというのも納得です。

弁慶飯(700円)と、塩とレモンでさっ ぱりといただく山菜の天ぷら(700円)、〆にもぴったりのむきそば(500円)。この日の山菜は、コシアブラと行者ニンニク、タラの芽、ウド

そばの実をゆで、鶏肉などの具材とともにつゆで食べるむきそばは、山形の酒田という地域に伝わる郷土料理。ワサビがぴりっと効いていて、さらりと食べられる一杯

おば古[銀座]
03・3561・6466
東京中央区銀座1・4・10
11:30 ~ 14:00、17:00 ~ 22:00 土・日・祝定休

新潟県/佐渡

|3軒目|【だっちゃ】(浅草)

島がまるごと上京?!佐渡パッション、浅草で全開です

島内だけで完全に自給自足ができるほど食材が豊かな佐渡島。「魚に野菜、米や牛乳…、美味しいものがいっぱいの佐渡を東京の人にもっと知ってほしいんです」と、溢れんばかりの佐渡愛を持つ店主のきたむらさやかさん。あご出汁のおでん「佐渡煮〆」など佐渡の家庭料理をはじめ、「イカの歯ぐき」(!?)、「ふくの子粕漬け」といった珍味も揃います。なかでも「いご草」という海藻の煮凝り「いごねり」は佐渡の食卓に欠かせないソウルフード。海藻の風味と佐渡醤油の味付けが、お酒にご飯にぴったり。豊かな佐渡の食文化へ誘ってくれるきたむらさんは、まさにプチ佐渡トリップin浅草の案内人なのです。

奥が「佐渡煮〆」。その手前が「いごねり」。ちなみに「イカの歯ぐき(520 円~)」はイカの口部分から硬い歯を手作業で取り除いたもの。一番手前にある 「ふくの子粕漬け(720円)」にはぜひ日本酒を。島内の全6酒蔵にはきたむらさん 自ら赴き、すべて網羅しているそう。お値ごろな晩酌酒からレアな限定酒まで、 佐渡のお酒が常時60種類以上揃います

だっちゃ[浅草]
03・5830・3790
東京都台東区西浅草2・27・1
17:00 ~ 23:00LO 不定休(予約応相談)

|4軒目|【朱鷺】(湯島)

酒の肴にご飯のおかずにぴったりな〝新潟の味?を提供

手前が、イクラで彩を加えたのっぺ汁(500円)。 新潟ではお馴染みだという「冷やし」バージョンでも提供している。奥が栃尾のジャ ンボ油揚げ(400円~)で、長岡市の栃尾で作られた厚みのある油揚げにねぎ味噌などの具材を挟んで焼き上げたもの。一番人気のメニューなのだそう

新潟出身者が創業した「朱鷺」は、湯島に店を構えて30年。「昔から代々受けつがれてきた〝ふるさとの味?を変えてしまわないよう、創業当時からの味を守って調理することに努めています」と板長の溝口良信さん。例えば、新潟のおふくろの味と言われる煮物「のっぺ汁」も、そのこだわりが反映されたメニュー。貝柱や干し椎茸などの具材から染み出た出汁を主役に据え、肉や魚は使わずに根菜ときのこでヘルシーに仕上げた一杯。朱鷺が提供し続けている新潟の家庭の味の象徴です。そんな新潟の食卓を再現した郷土料理の数々を、地酒を片手に大勢でわいわいと楽しみましょう!

店内は広く、大人数での宴会もOK。壁には、25種類以上揃えているという地酒の名前がずらり

朱鷺[湯島]
03・3833・0145
東京都台東区上野1・13・6 東京 新潟県人会館B1F
月~金11:30 ~ 14:00、 17:30 ~ 23:00LO  土・祝15:00 ~ 21:00 日定休

北海道

|5軒目|【小料理 ふじ井】(新橋)

北海道出身の藤井さんは、新橋ワーカーのお母さん!

店内には4 ~ 5名用のテーブル席とカウンターが8席。藤井さんとの会話 を楽しみに来店するおひとり様も多いそう

「新橋には一生懸命働いている人がたくさんいるでしょ。その人たちを応援したくて」と小料理屋を始めた藤井恵子さん。出身地である北海道から直送される魚介や珍味をはじめ、季節の野菜を使ったおひたしや、魚の煮つけといった、家庭料理で迎えるべく、仕込みの時間は料理人の表情。しかし夕方になり仕事を終えた新橋ワーカーが集まれば、朗らかな〝お母さん?の顔に。店全体がひとつの家族!?な雰囲気になるのです。〝ほっ?と心安らぐ料理をいただき、「お疲れ様! 明日も元気で頑張ってね」と笑顔で藤井さんに見送ってもらえば、明日働く元気も出てくるというものです。

家庭の食卓と同じようにおきまりのメニューはなく、大皿に盛られた料 理から少しずつ提供されるお任せスタイル(平均予算4,000円)。カボチャの煮物 やポテトサラダが人気。北海道の食材はいいネタが入ったときにだけ登場すると か

小料理 ふじ井[新橋]
03・3593・7072
東京都港区新橋2・2・5藤島ビル1F
17:00 ~ 22:30LO 土・日・祝日定休

Text: 伊藤裕、田中恵里菜、三宅あゆみ
Photo:花村謙太朗、吉永和志、柳大輔


※こちらの記事は2014年5月20日発行『メトロミニッツ』No.139に掲載された情報です

更新: 2017年2月18日

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