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和食技術の交流、伝授が国内外で急拡大!Part02

海外でも急速に広がりを見せている和食は、食べることだけでなく、その調理技術にも注目が集まり、積極的に学ぼうとする外国人が増えているそうです。ここでは、そんな国内外における和食技術の交流や和食文化普及のための活動などをご紹介。

国内では、和食を未来に受け継ぐための団体が数多く発足し、近年その活動が目立つようになりました。そして海外では、和食の料理人、日本の食材が大躍進を遂げ、和食文化を世界に発信し続けています。そんな和食にまつわるグッドニュースや明るいトレンドを厳選してご紹介します。

日本食文化の普及と日本料理研究会の挑戦

世界中で増え続ける和食店に対し、現地の料理人への技術指導のサポートをしている公益社団法人日本料理研究会という団体があります。正しい和食文化を普及させ、現地の料理人が和食を自国に合うようカスタマイズできることが大切と考える同団体、副会長の三宅健介さんにお話を伺いました。

公益社団法人日本料理研究会 副会長
三宅健介さん
慶應義塾大学経済学部を卒業後、東京海上日動火災保険㈱を経て、公益社団法人日本料理研究会入社。2015年6月より現職。MBAの資格を持ち、他社やプロジェクトのアドバイザーも務める。著書には、「青山企業のマーケティング戦略(共著)」(中央経済出版社)がある。

「公益社団法人日本料理研究会」とは?
1930年に設立され、同様の機関の中では最大、最古の機関。当時の日本料理界は調理師会を単位とする同門の結束が強く、技術の共有や伝承はその中だけで行われていた。そこで日本料理研究会は、その垣根を越えて、料理人向けに「料理展示会」や、「料理講習会」を毎月開催する他、技術を競う「全国日本料理コンクール」などのイベントを開催。さらに、専門誌「月刊日本料理」を刊行や、プロのレシピ検索サイト「日本料理研究会レシピる!」を展開している。日本料理のプロのナレッジ、技術や文化を伝承・共有できる場を創出し、それらをより広く発信することで、日本料理文化の伝承、調理師の技術向上や育成に寄与し、結果、国民の食生活向上に貢献することを目的としている。

2015年11月に台湾で中華日式料理発展協会の協力の下に開催された料理実演講習の様子。講師はテレビ等でも活躍の「日本料理よし邑」の冨澤浩一氏。台湾の日本食レストランに勤める約50名が参加し、現地食材を使った新たな料理を学んだ。参加者からは「現場で応用できるヒントが沢山得られた」との声も

現在、和食は世界無形文化遺産として認定され、農林水産省のデータでは、海外の日本食レストラン数は、2006年には2.4万店舗だったものが、2013年1月時点で5.5万店舗、そして2015年7月時点には約8.9万店舗にまで急増している。このような状況の中にありつつも、日本人として海外の日本食レストランの"質"に驚いた方も少なからずいるだろう。しかしながら、このような海外の日本食レストランでも、これまでと同等のモノを提供していては、いずれ淘汰されていく可能性が高いのではないだろうか。理由は2つある。1つは、現地での競争の観点だ。和食ブームに乗り、見よう見まねで出店し、最初の段階では流行に乗って繁盛したとする。すると、模倣したような店が増える。それで儲かるならと競合が増え、自ずと競争が生じるのだ。現に日本食レストランは既述の通り、カウントできているだけでも急激な伸びを見せている。2つ目は、顧客の観点だ。2015年、日本には年間約2,000万人の外国人渡航客が訪れており、旅行の最大の楽しみは「食」であると言われている。彼らが、日本で日本食に触れて帰国した場合、現地レストランとの差異に気づくはずである。これらの2つの理由から海外の日本食レストランはそれぞれ多少なりとも工夫を迫られる可能性が高くなっていくのではないだろうか。では、工夫を迫られた日本食レストランは、日本で提供されているような、日本人が好むような料理を自力で提供するようになるか?私はその可能性は低いと考える。なぜなら現地では、気候、食材、水が違うし、日本人とは異なる文化、慣習、嗜好が存在するからである。可能性が高いのは独自の工夫によって、およそ日本食とは呼べない領域のものになってしまうことではないだろうか。日本食と呼べない代物に変化してしまっては日本食文化の普及とは言えない。では、日本食たる範囲で工夫が起きるにはどのようにしたら良いだろうか?そこで私は、海外日本食レストラン、ひいては現地の料理人が本物を知り、そのエッセンスを取り入れて、自国に合うようにカスタマイズさせていくことが大切だと考える。そして、それは結果的に各レストランの差別化に繋がる可能性も高い。

「日本料理とその周辺知識」と題した座学形式の講義の様子。日本料理の歴史、成り立ち、和食との差異、特徴などの内容を取り扱う。参加者からは「大きな気づきを得られた」などの声が寄せられた

本物のエッセンスを活用する事例が台湾にある。台湾には数多くの日式料理店という日本食レストランが存在し、ひしめき合っている。その中で、現地の料理人が本物の和食を知り、レベルを高めていくことを目的とした「中華日式料理発展協会」が2014年5月に設立された。設立前から当会はサポートを行っており、具体的には年に数回、現地の協会会員向けに、日本料理の歴史や周辺知識に加えて、当会に所属する著名な料理人が技術的な指導を行っている。技術の指導については、すべて現地で手に入る調味料、食材を使って行う。彼らにはこれらをヒントに、台湾の嗜好や自店のターゲット顧客層に合うようにアレンジしていくことを促している。最近では、理念に共感する会員数も伸び、台湾国内で日本食の免許制度を確立していく気運も高まっている。異文化を受け入れる際に、自国の文化に合うように変化させることがその定着を促すことは広く知られている。日本も歴史的に、同様の道を辿って独自の食文化を発展させてきた。他国の料理に工夫を加え、日本人に合うようにしたものは数多い。もはやそれ自体が日本の食文化として捉えられているものもある。日本食文化の海外普及という観点に於いては、海外での日本食文化の変化にはある程度の寛容性を持つことも重要だ。人気になったものや定着したものを未来のある時点で振り返った時に文化と呼ぶとすれば、海外で現地に合うように変化した日本食が流行れば、未来にはそれが現地での日本食文化となる可能性がある。しかし、それが到底日本食と呼べないような代物になっては、日本食文化の普及とは言えないし、日本食材等の更なる輸出促進などにも結び付きにくい。日本人としては寂しいと感じる人も多いはずだ。日本食はまだまだ世界に対して競争力がある。その競争力の源泉の1つは、料理人であり、彼らが辛く苦しい修業を経て身に付けた技術や知識、経験がまさに活きてくる。海外レストランの技術指導の他にも、彼らが活躍できるフィールドを開拓していきたい。

Text:荒井しんご(effect)/三宅健介
※こちらの記事は2016年2月20日発行『メトロミニッツ』No.160掲載された情報です。

更新: 2017年2月12日

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