心に響く「時代」や「暮らし」
|100年後まで残したい料理本[3]|

100年後まで残したい料理本
〔ミュージシャン〕小宮山雄飛さん

様々な方に「100年後まで残したい料理本」をお聞きしてきました。そもそも「料理本」とは曖昧な言葉ですが、「料理が素敵に描かれている本であり、時代、個人の嗜好・ライフスタイルなどが『料理』を通じて伝わってきたり、『料理』の存在が作品の味付けになっている本のこと」。そんな風に言うことにしました。例えば“主婦のバイブル”と呼ばれたレシピ本、食通の作家による随筆もアリです。時代を切り取り、人生を写し出し、読み手の暮らしにヒントをもたらすことは、「料理本」ならではの可能性。人々の心に響く、価値ある「料理本」を広い価値観で集めてみれば、見えてくる何かがきっとある。そして、やがて「料理本大賞」みたいな評価軸が生まれるなど、1ジャンルとして「料理本」がさらに育っていったら面白いと思うのです。

〔ミュージシャン〕 小宮山雄飛さん

[写真の場所]TORANOMON LOUNGE
JTビル1階の“フリースモーキングラウンジ”。飲食物の持ち込みと喫煙ができ、無料で利用可能。店内の音楽や本棚のセレクトなど、空間総合プロデュースを小宮山さんが手がけている。
03・5572・4950 東京都港区虎ノ門2・2・1 JTビル1F 利用可能時間:平日10:00~18:00

東京生まれ、東京育ちで、 根っからの“グルメ番長”だからこそ

食通だった父に連れられ、子どもの頃から都内のあらゆる飲食店に通っていた。実家には、食べもの関連書専用の本棚もあったほど。『散歩のとき何か食べたくなって』もそこで見つけ、初めて手に取ったのは中学生の時だった。書かれているのは食べものやレシピのことよりも、お店やそこで働く人々のことが中心。子どもが読むには奥深すぎる1冊にも思えるが、今に至るまで何度も読み返すほど、小宮山さんの愛読書となる。「東京には食にまつわる文化や歴史が根付いたお店がたくさんあることを、父と一緒に通いながら感じていたんです。それをこの本で再確認できてうれしかった。今のグルメ本はお店に行くことが目的になっているものがほとんどだから、このタイトルの発想も最高にかっこいいですよね」 まさに日本の粋を感じられる大人な選書で、一方の『愛がなくても喰ってゆけます。』でも、生活に密着した店舗がたくさん紹介されている。「高級料理にもB級にも偏っていない、お店の選び方が素晴らしい。よしながさんのセンスと人柄の良さが出ていますよね」 実はこの本には、小宮山さんの座右の銘にもなっているセリフがある。“あたしがこんだけ食い物に人生を捧げてきたんだから、食い物の方だってあたしに何かを返してくれたっていいと思うの”。改めて声に出して読み、「分かるなぁ」と呟く小宮山さん。「僕は生まれ故郷でもある東京について、もっと知りたいんです。だから都内のすべての駅で下車して、それぞれの町にあるおいしいお店を把握しておきたい。それが何のためなのかよく分からないんだけど(笑)」 だから馴染みの店に通うより、入ったことのないお店に行く方が好きで、目的地の1駅前で降りて探すことも多い。どんなに忙しいときでも、仕事中でも、食べものに妥協はしたくない。「食べることは人にとって絶対に必要で、誰も逃げられないじゃないですか。だからこそ、楽しめた方が幸せだと思うんです」

SELECTED BOOKS

池波正太郎・著 新潮文庫 594円

散歩のとき何か食べたくなって

歴史小説家として著名な作者が、街の折々で出合った店の味を書き留めたエッセイ。時間がゆったり流れるような昭和中期の東京を感じられ、今も残る名店から庶民派な1軒まで60店以上を掲載

よしながふみ・著 太田出版・刊 950円 cよしながふみ/太田出版

愛がなくても喰ってゆけます。

「YながFみ」という架空の漫画家が主人公で、飲食店を訪れた際のささやかなエピソードが綴られたエッセイ漫画。食への愛情がコミカルに描かれ、料理を前に繰り広げられる人間関係も面白い

〔ミュージシャン〕 小宮山雄飛さん

〔ミュージシャン〕 小宮山雄飛さん

渡辺慎とともに結成したホフディランで、1996年デビュー。以降、ソロ活動やプロデューサー、Tシャツデザイナー、コラムニストとしても活動。映画や漫画などにも詳しく、中でもグルメへの造形が深い自称「グルメ番長」。10月28日(日)、渋谷WWWにて「ホフディラン秋のドラムまつり」開催決定。ゲストドラマー 多数出演。西寺郷太(NONA REEVES) ピエール中野(凛として時雨)、クハラカスユキ他。詳しくは hoff.jpまで

Photo 佐藤航嗣(TRON) Text 田島太陽
※こちらの記事は2014年9月20日発行『メトロミニッツ』No.143に掲載された情報です。

更新: 2017年3月22日

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