|尊敬できる鮨[16]|

尊敬できる鮨の名店
【すし㐂邑】二子玉川

江戸前鮨の歴史は、師匠から弟子へと技と伝統が受け継がれ、紡がれてきました。そしてそれは平成の世となった現在も続いており、また新しい歴史が作られています。ここではそんな現在の鮨を生み出し続ける職人のみなさんをご紹介します。

なぜ握り鮨を食べるのか?その意味と向き合いたくなる鮨

「新鮮な魚を美味しく食べたいのなら、刺身と温かなご飯の組み合わせに勝るものはない」とは、「すし㐂邑」の親方である木村康司さんの弁。祖父の代から鮨屋を営み、修業は実家で行ったそうです。二子玉川に店を構えて独立したのは10年前のこと。ところが、そのスタートは順風満帆とはいきませんでした。「美味しい鮨を握っているという自信がありましたし、もちろん良い魚を仕入れていました。でも、売れない。せっかく仕入れた魚が1週間もすれば腐ってしまうんです」ある時、もう捨てるしかない魚を包丁で割ってみたそう。すると、鉛筆の芯ほどの大きさだったが内側にピンク色で、美味しそうな部分が残っていたのです。「試しに口に入れてみたら、臭みはあるけど、美味しかったんです。これを武器に、自分にしかできない鮨が握れるかもと思い立ちました」。「すし㐂邑」の代名詞である"熟成"が始まるきっかけは、この偶然からでした。それから試行錯誤を繰り返し、6年目にやっと形になったそう。現在では温度の違う冷蔵庫4台を使ってタネを管理しています。「自分の信じたことをやっているだけなので、儲けよりも、美味しいものを食べてほしいという気持ちです。熟成も魚の旨みをめいっぱい引き出せる方法だと思うからやっているんです。もちろん好みはあると思いますが、鮨を楽しむために来てほしいですね」。基本的にはおまかせ1本。熟成具合を見てその都度変わる鮨ダネの数々に、思わず何度も足を運びたくなるお店です。

|木村康司さん|

1972年に東京に生まれる。実家が鮨屋で、祖父も父も職人だった。小さい頃から鮨が好きで、職人になるのを当たり前だと思っていたそう。実家で修業を終えた後、二子玉川に店を出して10年になる。

左が、3週間。右が50日熟成させたカンパチ。常に表面をトリミングし、酸化しないように気配りをする。水分が抜けて柔らかくなったカンパチは、まるでトロのような見た目に。「新鮮でぷりぷりしているというのは、鮨ダネの魅力にならない。魚の本来の旨みではないんですよ」と木村さん

長期熟成により魚の本来の旨みが解き放たれる

熟成1カ月さわら

濃厚な香りが鼻をくすぐる。ほんの少しだけつけた煮切りがポイント。これが、魚の本来の美味しさを引き立ててくれるのです。固めのシャリととろけそうな鮨ダネのコントラストも楽しい。噛むほどにシャリが鮨ダネに刺さるような感覚がある

3週間まかじき

まかじきは3週間目から旨みが出てくるそう。柔らかな身質に変化しており、香りもいわゆる赤身の魚とは異なっている。身質や香りが変わるのは、酵素が細胞を分解してくれるおかげ。木村さんは仕入れた段階で、個体差などから熟成の仕方を計算する

すし㐂邑すしきむら

すし㐂邑

住所:
東京都世田谷区玉川3・21・8
TEL:
03・3707・6355
営業時間:
17:30~19:30、19:30~22:00(2部制、要予約) 月定休

Photo:加藤純平
Text:effec(佐藤潮、いずみかな、山田彩、荒井しんご)

※こちらの記事は2015年2月20日発行『メトロミニッツ』No.148に掲載された情報です。

更新: 2017年1月20日

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