|尊敬できる鮨[15]|

尊敬できる鮨の名店
鮨 一新ー浅草ー

江戸前鮨の歴史は、師匠から弟子へと技と伝統が受け継がれ、紡がれてきました。そしてそれは平成の世となった現在も続いており、また新しい歴史が作られています。ここではそんな現在の鮨を生み出し続ける職人のみなさんをご紹介します。

一番大事なシャリに合わせてできるものは全て手作りする

15歳で料理の世界へ飛び込んだ「鮨一新」の橋本孝志さん。若くして鮨に魅了された理由はというと?「他の料理屋と違って、鮨はカウンターがあれば充分。その潔さが魅力的でしたね。もともと鮨が好きだったこともあって、いろんな店に務めました。有名店でなくとも昔ながらの江戸前仕事をきちんとしているところで修業したつもり」今では珍しくなくなった氷式冷蔵庫ですが、創業ほどなく導入。当時は作れる業者も少なく、特注だったとか。さらに自慢のシャリも竈で炊き上げます。「鮨の味は、まずシャリから作り上げて、そこに鮨ダネを合わせていかなきゃいけないんです」。橋本さんの握るシャリは赤酢がしっかり効いていて、やや大ぶり。口に含むと最初はその存在感に驚くかもしれませんが、そのまま鮨を噛み締めているとカジキマグロのヅケやひらめのこぶ締めなどタネの旨みが口いっぱいに広がるのです。力強いシャリがあってこそ、タネの味わいが増幅するのだと思い知らされます。これぞ竈の力。そして丁寧なシャリ切りの賜物です。さらには橋本さん、店で出すものは、できるだけ全て手作りしたいとおっしゃる。「鮨に関わらず、つまみに使うカラスミやガリも手作り、他の店と同じ味ではつまらないでしょう。食べていただくもの全部ひっくるめて一新の味だって言いたい」。美味しさを追究するがゆえ、必要以上にてまひまをかけていながら、まだまだ納得できないと語る橋本さん。今日も観音裏のこの店で江戸前の仕事を探求しています。

|橋本孝志さん|

包丁さばきも見事な橋本さん。10人座れば満席のカウンターは常に清潔さを保っています

1962年、浅草生まれ。15歳の時から地元の鮨屋で修行を始め、東日本橋や銀座で学んだ。独立し、地元である現在の場所に店を構えたのは1992年のこと。台東区でただ1つ、ミシュラン1ツ星を持つ鮨屋。(2015年2月)

この日のおまかせ15,000円から、10貫を盛り込んでもらいました。柔らかな煮蛸、かじきやマグロのヅケなど、一つ一つに江戸前の丁寧な仕事が

鮨 一新のこだわりの道具たち

<七輪>穴子の火入れはこちらの七輪で、笹の葉をかませて。笹の香りがほのかにうつり、柔らかな焼き上がりに

<蒸しかまど>大黒蒸しかまどは、愛知の職人さん作。圧力鍋のように熱を逃がさず、鮨に最適の固さに

七輪/蒸しかまど七輪

氷式冷蔵庫

<氷式冷蔵庫>
通常の冷蔵庫が4℃前後なのに比べ、氷式冷蔵庫は温度が12℃~15℃と高めなので、緩やかに熟成が進みます

Photo:加藤純平
Text:effec(佐藤潮、いずみかな、山田彩、荒井しんご)

※こちらの記事は2015年2月20日発行『メトロミニッツ』No.148に掲載された情報です。

更新: 2017年1月12日

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