味も雰囲気も本場さながら!
東京で南イタリア料理を食べるならここPart04

|美味しい南イタリア[13]|最終章
東京イタリアンの一大勢力 シチリア料理の店

メデューサの顔と3本の足からなるトリナクリアが描かれたシチリアの州旗。東京の街でもよく見かけるようになりました。南イタリアといえばシチリアが連想されるくらい身近になっているのでは。しかしながら、イタリアの各州がそれぞれ違うように、シチリアの島内でも、地域によって食文化に違いがあることご存知でした?

パレルモ

|1軒目|Don Ciccio トラットリアシチリアーナドン・チョッチョ[青山]

シチリア料理の先駆者が率いる
ファミリー感あふれるトラットリア

東京のシチリア料理店について語るなら、外せないのがこちら。オーナーシェフの石川勉さんが単身でシチリアに渡ったのは、イタリア修業がまだ珍しかった30年ほど前のこと。ましてやシチリア料理を学ぼうという日本人はほとんどいなかったそうです。「『ゴッドファーザー』の世界観に憧れていたのもあるし、シチリア料理を日本に広めたいと思いまして」。その世界観を体現するのは“ファミリー”だと石川さんは言います。「シチリアの家庭では週末になると、一族が集まって、長いテーブルを囲みながらマンマの料理をわいわいと食べるのが一般的。この店ではその楽しい雰囲気を再現したいと思っています。お客様には、イタリアのどこでもない、シチリアに訪れた気分を味わっていただきたいですね」。石川さんはパレルモのリストランテで1年修業した後、フィレンツェやボローニャでも働きましたが、シチリアへの思いはさらに募っていったとか。「シチリア料理は毎日食べても飽きがこないんですよね。魚介は豊富で新鮮。また野菜も、味が濃くて滋味深い。島でたくさん採れる柑橘系の果物やオリーブをソースに加えれば、味に深みと変化をもたらしてくれる」。そんなシチリアの恵みを味わえるのが「カジキマグロのギオッタ風」です。新鮮なカジキをトマトソース、オリーブ、松の実、干しぶどうと煮込んだこのひと皿は、噛み締めるたびに様々な食材の表情が味わえる、じつに調和のとれたひと皿。料理も、店の空気も、シチリアそのものを体感できる名店といえます。

中央右/カジキマグロを松の実、オリーブ、ケッパー、干しぶどうとともにトマトソースで煮込んだ「カジキマグロのギオッタ風」2,700円。

復活祭などお祝い事で食べられるシチリア伝統の郷土菓子「カッサータ」1個900円。リコッタチーズにチョコチップやドライフルーツなどを混ぜ込み、マジパンで包み仕上げます。

写真中央左、右/厨房に立つ石川シェフ。“ファミリー”を大切にするその姿勢は、まかないをスタッフ全員で一緒に食べるなど、随所に見てとれます

SHOPDATA
03・3498・1828
東京都渋谷区渋谷2・3・6
18:00~24:00LO日・祝日の月定休

|イタリアンの豆知識|

イタリア料理店に入ると、まずパンとオリーブオイルを出してくれるところけっこうありますね。でも、この食べ方はもともと貧しい人々が、パンしか食べられずどうにか美味しく食べようという工夫から生まれた食べ方だったとか。現在では日本ではもちろん、本国のレストランでさえも、この慣習に賛否が分かれているのだそう。

ラグーザ

|2軒目|Pinosalice ピノサリーチェ[渋谷]

渋谷奥地の隠れ家トラットリアで
シチリアマンマ直伝のパスタを!

オープンキッチンで腕を振るうのは、ラグーザで約2年間修業を積んだ、柳令子シェフ。もともと都内のフレンチレストランで働いていた彼女は、ある日訪れた南イタリアの郷土料理に感銘を受け、イタリアンの道に進路変更します。「魚介、肉、柑橘類、野菜、あらゆる自然の食材がとても風味豊かで美味しかった。調理の仕方もバターや牛乳なども多用しないので、全然しつこくなく、一度食べたら何度でも味わいたくなる、そんな料理だったんです」。その調理法はレストランだけでなく、いわゆる“マンマの味”として各家庭にも伝わっているそうです。中でもラグーザでの修業中に食べたあるパスタは、今でも忘れられない特別なひと皿だとシェフは言います。「当時働いていた店のシェフの奥さまが、クリスマスに作ってくれたもので、南イタリアの伝統的なショートパスタのカザレッチに、豚肉のトマト煮を和えた料理でした。S字型をしたカザレッチは、豚肉のエキスがたっぷりと染み込んだトマトソースとの絡みも抜群。そのレシピはシェフのお母様から奥さまへと伝わったもの。シチリアの各家庭では、昔ながらの調理法と味が、親から子、子から孫へと受け継がれていくんですよ」。マンマ直伝のそのパスタは、現在では「ピノサリーチェ」のスペシャリテとして、日本でも多くの人に愛されています。連綿と継がれてきた、シチリアの郷土料理。半地下の隠れ家的トラットリアで、ぜひご堪能ください!

写真左/マンマ直伝の「豚肉の煮込みのカザレッチ」1,500円。カザレッチは、断面がS字になっており、ソースが絡みやすい。「愛媛産ブラッドオレンジのサラダ」900円。

ベージュを基調とした店内は、ラグーザの街並をイメージ。

「豚肉のポルタフォリオ」2,200円。“ポルタフォリオ”とはお財布の意。パン粉にピスタチオ、アーモンドなどシチリアの名産品を和え豚肉で、お財布を閉じるように包んでソテーしたもの。ちなみにピスタチオは、現地で直接買い付けた高級ピスタチオを使用。

SHOPDATA
03・3496・3555
東京都渋谷区鶯谷町15・10ロイヤルパレス渋谷102
12:00~14:30LO、18:00~22:30LO(祝~21:30)日定休

|イタリアンの豆知識|

紀元前4世紀までさかのぼることができるパスタの歴史の中でも「アル・デンテ」とイタリア人が言い出したのはここ100年くらいと言われています。それまでは、柔らかくゆでて食べるのが一般的。庶民がフォークを使って食べるようになった19世紀より前は手食文化。ゆでたてのアル・デンテは食べられなかったはずなのです。

パレルモ

|3軒目|ROZZO SICILIA ロッツォ・シチリア[白金高輪]

シェフもかの地で毎日食べた!?
これぞ飽きのこない本場の味!

シチリアの州都パレルモにある郷土料理の店「サンタンドレア」にて修業を積んだ中村嘉倫シェフ。3年間の修業時代、一度も日本に帰ることはなかったそう。「なにもかもが新鮮で、発見の毎日でした。食べ物もすごく美味しくて、日本が恋しくなるなんてことは一度もなかったですね。シチリア料理は非常にシンプルな手法で、素材の持ち味を引き出すことを重視しています。和食にも似たそんな手法が、僕にも合っていたのでしょうね」。そんなシェフがほぼ毎日食べていたという料理が、シチリアを代表する郷土料理「カジキマグロのインヴォルティーニ」と「茄子のカポナータ」。どちらも現在の店の定番メニューとなっており、シェフにとっての懐かしいその味を目当てに集まるファンも多いのだとか。

カジキマグロでパン粉、ケッパー、松の実などを包んでオーブン焼きした「カジキマグロのインヴォルティーニ」2268円。茄子、玉ねぎ、トマト、オリーブを和えた「茄子のカポナータ」972円。どちらも、シチリアを代表する郷土料理。

三種のトマトをモッツァレラに和えたこの店の名物「まるごとモッツァレラ、どっさりプチトマト」1728円。

SHOP DATA
03・5447・1955
東京都港区白金1・1・12
18:00~24:00LO 日定休

トラパニ

|4軒目|Campagnola カンパニョーラ[渋谷]

本場仕込みの目利きで
魚も野菜も水までこだわる

一般的にアクアパッツァといえば、スープに複雑な魚介の旨みを加えるために、魚だけでなく、アサリやエビなども一緒に煮込まれるもの。ですがこの店のアクアパッツァは、黒ソイなどの旬の魚をチェリートマト、水のみで煮込み、味付けはシチリア産の塩とオリーブオイルのみという、実にシンプルな調理法なのです。「修業していたシチリアの店のシェフが教えてくれた作り方なんです。魚一匹から奥深さと旨みを引き出せるのかって、衝撃を受けたんですよ。余分な部分を削ぎ落とし、素材本来の味を最大限引き出すのがシチリア料理の真髄。本場で学んだことを今の店でしっかり表現していきたい」と語る山根佳典シェフ。シンプルだからこそ食材、水、調味料ひとつひとつが重要。その目利きにも本場で鍛えた舌が光ります。

厳選した季節の魚をまるまる一匹使用する「旬の黒ソイのアクアパッツァ」2250円。

「シチリア風手打ちのブシャータ南伊風トマトを使わないミートソース」。ちなみにこの店の茹で汁は、3種のミネラルウォーターをブレンドし、シチリアの硬水に近づけています。そうすることで、日本では再現しづらい本場のパスタと同じアルデンテに仕上がるそう。

SHOP DATA
03・3358・3409
東京都新宿区新宿6・4・2
18:00~24:30(22:00以降は予約制)不定休

|イタリアンの豆知識|

ローマやその周辺の地域では5月1日は「空豆を食べる日」。ちょうど4月末から5月頭にかけて出てくる空豆の新物を食べることで、植物の芽吹きをつかさどる女神・フローラに感謝し、五穀豊穣を祈るのだそう。ちなみに、イタリアの空豆は細見のさやと、ちいさな豆が特徴。しかも新物は生で食べる習慣もあるのだとか。

Photo 柳大輔
Text 荒井しんこ゛(effect)

※こちらの記事は2014年4月20日発行『メトロミニッツ』No.138に掲載された情報です。

更新: 2017年1月6日

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