体にやさしいお惣菜が色とりどり !

|日本の家庭料理[11]|
おばんざいの名店3軒

今や、すっかり定着した感のある「おばんざい」という言葉。 作り手として、おばんざいを提供する際、 そこにはどんな思いが込められているのでしょう。

|1軒目|【狐兎】神保町にいながら京都を満喫。委ねる心地よさに気分もはんなり

「お出ししてるもんはなんでもない家庭料理ですよ」と謙虚に語るのは、店主の長岡大輔 さん。メニューはなくおまかせのみで、おひたしや和え物、イワシの生姜炊き、肉団子などが、 お腹の具合に合わせて供され、〆には長岡さんが絶妙なタイミングでご飯と椀物を出して くれます。これらの料理は長岡さんの母と祖母が家で作ってくれたおばんざいがベースに なっているそうで、ほぼ独学。しかしながら、旬の京野菜が持つ甘みや苦みを引き立て る出汁使いや、山椒などの薬味使いは、家庭の味と言えど上品な京料理そのものです。 「でもね、うちは京料理を出すお店というより、敷居をまたいでもらったら、もうここは京 都なんですよ」。確かに、扉を開ければ香るお香、町屋を思わせる設え、はんなりとした 長岡さんの京都弁も相まって、「狐兎」に来ればゆったりとした京都トリップが楽しめます。

おばんざいの多くは京野菜を使ったもので、 長岡さんによると「お客さんが体を壊したら店に来て もらえへんから(笑)。体にええもんだけ、用意してます」 とのこと

わざわざ関西から職人を呼び寄せて 作ったという、落ち着いた雰囲気が漂う店内。入り 口では食事を邪魔しない程度に、京都の松栄堂のお 香を焚いています 

「狐兎」定番のイワシの生姜 炊きや牛肉の山椒炊き、しらたきの山椒炊きなど。 その他にも煮物や焼き物など、カウンターには約20 種のおばんざいが用意されています。店内メニューは ありませんが、お酒は別でおまかせ4,000円~。ランチの定食は1,000円~

【狐兎】
電話:03・5280・7757
住所:東京都千代田区神田小川町3・7・1
ミツワ小川町ビル1階
営業時間:11:30~14:30、18:00~23:00 土・日・祝定休

|2軒目|【旬楽】中目黒:カウンターから垣間見えるは女将の料理に対する真摯な姿

30年以上飲食業に携わってきた女将・増田敏子さんが営む「旬楽」。「旬を気軽に、たくさ ん味わって欲しい」との思いから、おばんざいのお店を始めたそう。そんな「旬楽」の料理 のベースは、お店のオープンを志し、若者に交じって修業した銀座の割烹料理店。そこ で学んだ和食の基礎に、食いしん坊な両親の影響で磨かれた味覚や、義母から教わっ た家庭料理が合わさり、毎日でも食べたい増田さんの味が生まれました。「味の決め手は やっぱり出汁なんです。私にとって〝料理の原点?ともいえる存在」。割烹で学んだ出汁を 基本に、それではすっきりとし過ぎてしまうため、季節や気温によって濃度を調節するの がポイントで「それと愛情をかけることが大切!」と教えてくれました。食べる人を思い、愛 を込めているからこそ、家に帰ってきたようにホッとする良店なのです。

カウンターにならぶ料理のほかに、煮魚や焼き魚、お造りなどの旬の魚料理も用意されています。 

ちゃきちゃきとした身のこなしと、屈託のない笑顔がすてきな増田さん。増田さんの温かな人柄と野菜中心の料理に魅かれて、近隣に住む〝働く女性?が多く来店しているそう。

菜の花の辛子和えやアスパラガスのおひたし、プチトマトの酢漬けなどの数種類の小鉢に、ご飯やお吸い物、魚料理などの「おまかせコース」は4000円~。すべての料理は単品での注文も可能。何度来店しても客が飽きないようにと、同じ食材でも日によって調理方法を替えるなどの工夫が欠かせないんだとか。

旬楽】中目黒
電話:03・3798・5393
住所:東京都港区麻布十番2・12・4
営業時間:17:30~23:30 土・日・祝定休

|3軒目|【よし喜】麻布十番:みんな大好きな料理が必ずある!東京のお母さんの家庭料理

今年で開店27年を迎える「よし喜」を切り盛りするのは女将の小山喜子さん。子どもの時は来客の多い家で料理を振る舞うお母さんのお手伝い、大人になってから主婦時代も手料理でもてなす機会が多かったため、自然と料理の腕が上がったのだそう。「なによりも喜んで食べてもらえることが幸せで、子育てが落ち着いたらお店をやりたいと考えていたんです」。そんな小山さんが作るよし喜の定番は、筑前煮やキンキの煮付け、アジの南蛮漬けといったスタンダードな家庭料理。他には季節の食材を取り入れ、常連さんは四季の移り変わりをよし喜の料理で感じるのです。中でも一番人気をうかがってみると、「ないんですよ」ときっぱり。というのも、ひと皿ひと皿の料理にファンが着いているんだとか。お客さんの喜ぶ顔を思い浮かべながら、愛情を込めて作っているからこそなのでしょう。

カウンターには、常時10皿以上の煮物、焼 き物、揚げ物などの家庭料理がならびます。一品一 品丁寧に仕込むため、なんと5時間以上かかるそう。 子育てがひと段落した45歳から店を始めたという小 山さん。作った料理を「美味しい!」とペロリと食べて もらうのが、一番の喜びだとか。

ひじきの煮 物とアジの南蛮漬け。好き嫌いを聞きながらおまかせ で、ちょうど良い量を小山さんが盛り付けて提供して くれるのが嬉しい。基本的にメニューはなし。麻布 十番という立地にもかかわらず、平均して5000円前 後でお腹いっぱいになるまで食事を楽しめます。

よし喜 (よしき)
電話:03-3798-5393
住所:東京都港区麻布十番2-12-4
営業時間:18:00~23:30 夜10時以降入店可 定休日 土曜・日曜・祝日

Photo 吉永和志(狐兎)加藤純平(旬楽・よし喜)
Text 河島まりあ

※こちらの記事は2014年5月20日発行『メトロミニッツ』No.139に掲載された情報です

更新: 2017年1月1日

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