エレガントでロマンのある

|羊肉の饗宴[11]|
羊料理の魅力を味わえる店⑦
3年連続ミシュランガイド二ツ星に輝いた「エスキス」

ヨーロッパ、アジア、中東、アフリカ、アメリカ、そしてオーストラリアやニュージーランドまで、世界各地で愛されている羊肉。日本の羊肉料理と言えば、確かにジンギスカンくらいかもしれませんが、今、東京をめぐってみれば、これだけ素晴しい羊肉料理の数々に出合えます。

フランス料理「ESgUISSE エスキス」

仔羊をめぐる旅、個人的なオリエントの記憶2月から登場。仔羊はフランスのトップレベルに匹敵する肉質とリオネルさんが惚れ込んだ、北海道士別市「しずお農場」産。ラムチョップは中心温度57℃で焼き、肩肉は2時間蒸し煮に。7種類のスパイス、仔羊節のパウダー、ドライオレンジなどで引き立てている。夜のコースおよび昼の19,200円のコースの1品

「皿の上に描いた羊をめぐる冒険は、自分の人生そのものなんです」

今年で3年連続ミシュランガイド二ツ星に輝いた「エスキス(フランス語で素描の意味)」。開店と同時にシェフ・エグゼクティブに就任したリオネル・ベカさんは、ミッシェル・トロワグロの秘蔵っ子として、「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」のシェフを経たあと、こちらへ。日本の食材を積極的に取り入れるのはもちろんのこと、日本特有の「umami」に魅了され、鰹節にヒントを得た自家製の鴨節に続き「仔羊節」(!)も作るなど、クリエイティブな東京発フランス料理を生み出す気鋭のシェフ。フランス・コルシカ島にて、チュニジア人でムスリムの父、シチリア人でカトリックの母の間に生まれ、プロヴァンスで育ったリオネルさんは、何層にも折り重なった文化的背景を携えています。「イスラム教最大のお祝いでラマダン(断食)明けに食べるのは、無垢で善のシンボル、仔羊。それを食べることは、改めてアラーの神様に感謝し誓うことを意味します」。

一方、キリスト教においても仔羊は、純真や良心、さらには許しの象徴。「キリストの復活祭、イースターでは、家族が集まり、許しを意味する仔羊を丸焼きにします。それを食べることで、キリストを十字架にかけた人々を許すのです」。仔羊を通して見えてくる2つの宗教の共通点。家庭内に異なる宗教が共存していたリオネルさんだからこそ、その思いも格別です。また、フランスには、日曜日になったら家族が皆で集って食事をする「ルパドティマンシュ」という習慣があり(今では失われつつあるそうですが)、そこで食べるのもやはり仔羊だそうで、モモ肉を塊で焼いて1つのものを家族で取り分けることに意味があるそう」毎年2月に仔羊の新メニューを発表するのも、「他のどの肉よりも精神的な深い絆を感じるから」とのこと。

聞けば今年のテーマは「羊をめぐる旅」。仔羊のロティ(焼く)とブレゼ(蒸し煮)を彩るのは、羊文化の地域にちなんだものばかり。ソースに使ったイドロメル(はちみつワイン)は、羊の名産地、ブルターニュの特産。ナスとレモンのコンフィは羊のクスクスなどを食べるモロッコやチュニジア、クランベリーやミュルベリー、黒カルダモンはマトンをよく食べるパキスタンやインド、そして、仔羊は北海道産…と、お皿の上に描かれるのは羊をめぐる世界の冒険地図。奇しくもそれは、「仔羊は自分にとって精神的なテロワールのシンボル」と言うリオネルさんがたどってきた足跡の素描でもあったのです。

Chef : リオネル・ベカ さん

1976年、フランス・コルシカ島生まれ。大学で歴史学を学んだあと、20歳過ぎで料理の世界へ。2006年、「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」シェフに抜擢され来日。11年、フランス国家農事功労賞シュヴァリエ受勲。12年、「エスキス」開店と共に、シェフ・エグゼクティブに就任

店内は、白を基調としたモダンなインテリア。グランメゾンらしい風格を漂わせつつも、昼間は窓からたっぷり差し込む自然光や、天井のアクセントに使われた木材などで、南仏の邸宅を訪れたようなリラックスした雰囲気に包まれる

エスキス

TEL:03・5537・5580
住所:東京都中央区銀座5・4・6 ロイヤルクリスタル銀座9F
営業時間:12:00~13:00LO、18:00~20:30LO 日曜ディナー定休

Text:浅井直子
Photo:中村総一郎

※こちらの記事は2015年2月20日発行『メトロミニッツ』No.147掲載された情報です。

更新: 2016年12月10日

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