東京のグルメシーンをリードする

|異彩のビストロ[9]|
[lumielune]下北沢

東京のビストロが今、面白いことになっています。日本の有名なフランス料理店や、本場フランスに渡り、腕を磨いてきたシェフたちが営む、小所帯で、ジーンズでも行けて、仕事帰りにふらっと立ち寄れるお店が続々とオープンしているのです。一昔前はそんな輝かしい経歴を持つシェフたちはホテルやグランメゾンで料理長を務めるのが通例で、高級店でしかその腕前を堪能できませんでした。彼らにビストロを開いた理由を聞いてみると「フランス料理をもっと身近に感じてほしいから」と、口を揃えて言います。ここ数年、“コスパ”を重視した気軽なビストロが増え、私たちにとってワインやフレンチは身近になったように思えますが、彼らが言うのは伝統を踏まえ、現代の技術や食材を駆使した“本当のフランス料理”。料理と向き合う眼差しはグランメゾンのシェフと変わりません。本特集では、そんな数あるビスロトの中でも頭ひとつ抜けた、その本格的な料理や独特なスタイルで異彩を放っている、今行くべき店をご紹介します。

木原良尚さん-Yoshinao Kihara-

1978年生まれ。六本木「hisio」など、都内の複数のレストランを経て、「ミシェル・ブラストーヤジャポン」の野菜部門シェフに。その後、中野のワインバー&ビストロ「アズキッチン」シェフを務め、2014年6月、10年来の友人だったソムリエの阿武亮介さんと共に、下北沢のオステリア「月市」を引き継ぐ形で「ルミエルネ」をオープン

月明かり、を意味する「ルミエルネ」。以前、この場所にあったオステリア「月市」へのオマージュとも言うべきその名は、「月の光にひかれて人々が集まるような場所」をイメージしたものだとか。都内の数々のレストランで腕を磨き、「ミシェル・ブラストーヤジャポン」で修業した経験もある木原良尚シェフ。気鋭の実力派としてその名を轟かすその彼が、相棒のソムリエ・阿武亮介さんとともに作りあげた店は、ビストロの枠にはまらない、自由な発想に溢れていました。

“新・ビストロ”の軸を築き上げた圧倒的な自由度&メニューバリエーション

オープンからわずか1年で、下北沢、いや東京を代表する人気ビストロとなった「ルミエルネ」。オーナーシェフであり“新世代の実力派”と称される木原良尚さんの料理は、フランス料理の技術をベースにしつつ、類いまれなる発想力と柔軟性で、次から次へとサプライズを見せてくれます。「よく言えば好奇心旺盛、悪くいえば飽きっぽい」と笑う木原シェフ。都内のレストランを渡り歩き、世界各国の食材や調理法を貪欲に吸収してきた経験が、料理に壁を作らない今のスタイルにも生きていると言います。なかでも自信ありと胸を張るのが「食材として最も可能性を感じる」という野菜料理。契約農家から届く有機野菜、それぞれの個性に合わせ、火入れを調整したり、ムースやソースといった具合に形を変えて楽しめる表現方法の豊かさが、相対していて楽しいのだとか。その集大成とも言えるのがシグネチャー的なひと皿「30種の季節の温野菜」です。一方でこうしたレストランの料理とともに、シーザーサラダやフライドポテトといった気取りのないメニューまで、40種類超の料理をカウンターかつ気軽な価格で楽しめるというのもまた、この店の懐の深さ。「カウンター越しにお客さんの反応を見たり、会話ができるのが嬉しいんです。幅広い年齢の方に何度も来てほしいからメニューに幅を持たせて、価格も抑え目にしたい。そのために人件費を抑えて手間をかけようと。いい食材を見分けること、安い食材でもそれをいかにおいしく調理するかが料理人の能力だと思うし、安くて美味しいものが提供できれば、お客さんは来てくれると思っています」その自信はいま、しっかり結果として現れ、今夜も月明かりの先は笑顔と賑やかな声が響いています。

上)テーブルには取り皿に加え、WECKのガラスジャーにフォークとナイフ、箸をセット。シェアOK、箸でもどうぞ、のサイン!下)パスタなどカジュアルメニューも加えて「食べたいものが必ずある」店に

|EPISODE|

ミシェル・ブラスのスペシャリテ

「ガルグイユー」に魅せられ

仏の天才料理人、ミシェル・ブラス(写真上)。彼の世界初の支店、「ミシェル・ブラストーヤジャポン」で修業した木原シェフの「30種の季節の温野菜」は、氏のスペシャリテである野菜料理「ガルグイユー」にインスパイアされたもの。「彼は“自然の風景からも料理のヒントを得る”と言っており、その皿には自然の情景が感じ取れます。東京で同じことをやるのは難しいですが、自分が実際に産地で見て、感じたものを表現していけたら」

BRILLIANT!! NO1

グランメゾン級の料理を気軽にカウンターで

一種類ずつ丁寧に下処理した30種類超の野菜を、生ハムと極限まで凝縮したブイヨン・ド・レギューム、バターで味に深みを出したソースでいただく、30種の季節の温野菜生ハムの香りをまとわせて1,080円。

中近東をイメージしたスパイス使いと絶妙な火入れが感動的な仔羊背肉のスパイスローストピペラードとミントチャツネ2,376円

BRILLIANT!! NO2

味も、見た目も、香りも、ラベルも。面白いワインがずらり

ソムリエの阿武さんが目利きするワインは、「極力手を加えずに、ぶどう本来の味を生かして醸すというスタイルに共感するから」と自然派が中心。繊細な料理とふたりの好みを反映した軽めの赤や白、果皮や種を果汁と一緒に発酵させることでうっすらオレンジ色になる注目のオレンジワインなど、驚きと楽しさに満ちた品揃えが光ります

BRILLIANT!! NO3

深い時間まで料理とワインが存分に楽しめる

ラストオーダーは翌2時。2軒目、3軒目使いができるのも嬉しい限り。深夜だからと言ってメニューを絞ることなく自家製シャルキュトリー(写真の3品盛り1,080円)を初め、パスタ、デザートまでオールOK。ふらり立ち寄る常連客や地元客が後を絶ちません

常連客が常連客を呼ぶ“奥シモキタ”の秘密基地

下北沢の賑やかな通りを抜け、人通りが少なくなった道の先に灯るほのかな明かり。地元住民でもすぐにはそれと分からない場所にあるのが、目当てのビストロ「ルミエルネ」。互いへのリスペクトを忘れないシェフ&ソムリエの"ふたりオーナー"が目指すのは、「年1回のレストランより、月1、週1で来てもらえる店、前のオステリアのように常連客に愛される店」だと言います。そのためにも「レストランの技術と味をビストロの価格で提供したい」と木原シェフ。そんなシェフの腕に惚れ込んだ阿武さんも「高い、安いだけでなく、楽しさを知ってもらいたい」と、常識にとらわれない独自の視点が生きるユニークなワインのラインナップと、自然体のサービスでバックアップ。深夜3時までの営業、存在を決して主張しすぎない店構えも"知る人ぞ知る繁盛店"の証し。「美味しく食べて、楽しく飲める」をシンプルに、そして真摯に追求した、新世代ビストロのお手本ともいうべき名店です。

lumieluneルミエルネ

住所:
東京都世田谷区北沢3・18・5
TEL:
03・3465・0573
営業時間:
18:00~翌2:00LO 不定休

Photo:竹崎恵子(7Q7)
Text:原口りう子(7Q7)

※こちらの記事は2015年8月20日発行『メトロミニッツ』No.154に掲載された情報です。

更新: 2016年12月1日

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