東京のグルメシーンをリードする

|異彩のビストロ[8]|
Le Bonze[銀座]

東京のビストロが今、面白いことになっています。日本の有名なフランス料理店や、本場フランスに渡り、腕を磨いてきたシェフたちが営む、小所帯で、ジーンズでも行けて、仕事帰りにふらっと立ち寄れるお店が続々とオープンしているのです。一昔前はそんな輝かしい経歴を持つシェフたちはホテルやグランメゾンで料理長を務めるのが通例で、高級店でしかその腕前を堪能できませんでした。彼らにビストロを開いた理由を聞いてみると「フランス料理をもっと身近に感じてほしいから」と、口を揃えて言います。ここ数年、“コスパ”を重視した気軽なビストロが増え、私たちにとってワインやフレンチは身近になったように思えますが、彼らが言うのは伝統を踏まえ、現代の技術や食材を駆使した“本当のフランス料理”。料理と向き合う眼差しはグランメゾンのシェフと変わりません。本特集では、そんな数あるビスロトの中でも頭ひとつ抜けた、その本格的な料理や独特なスタイルで異彩を放っている、今行くべき店をご紹介します。

青木健晃さん-Takeaki Aoki-

1992年から銀座の老舗フレンチ「ペリニィヨン」に入社。2000年に渡仏、ブルゴーニュ地方などで約2年間修業ののち帰国、2003年からふたたび「ペリニィヨン」に戻り料理長に。20年ほど通い親しんだ銀座の地で、2012年7月「ル ボーズ」を開店。連日満席の人気店となる。

カジュアルなインテリアに、シェフはエプロンにTシャツとコットンパンツ姿。しかし、提供されるのは、心のこもったサービス、手入れされたカトラリーや食器、何より確かなフランス料理の技法を感じられる品々。とにかく“ギャップ”を感じられるこの店は、銀座という地にあって、非常に稀有な存在といえます。ビストロ界に新風を吹き込み、オープンから丸3年経つ今もシーンを引っ張る青木健晃シェフ。オーセンティックなレストランでの経験から発想を得た“自分が行きたいと思う自由な店”とは、きらりと光る唯一無二の存在感の理由とは…?

“ちょっと1杯”もできるビストロからフランス料理の文化を伝えていく

客席にいても厨房のシェフの動きが分かる間取り

「ピラミッドの底辺にいたい」。青木シェフは自身の店を、こんな風に表現しました。選ばれし名店ではなく、あえて誰でも行ける身近な店に。それは、過去のビストロブーム後、同じような店が乱立した飲食業界への挑戦でもあります。長きにわたりクラシックな銀座の名店「ペリニィヨン」で経験を積んだ後、独立して始めた「ルボーズ」は“ハーフパンツとビーサンで入れる店”。「ワインを1杯飲みたい時にも行けて、食べて飲んで満腹にもなれる。自分で使い方を決める、自由な場所にしたくて」。当時、気軽な“ガッツリ系”ビストロは多かったものの、ひとりで行くとなるとどこも難しい。だからカウンター席を作ることは外せなかったそう。「ただクラシックなレストランにも、もちろんその良さがある。フランス料理に親しみのない人がうちに来て、そんな店に行く足掛かりを作りたい」。普段使いの店で、きちんと手間をかけ、技を使った美味しいものを。でも、ハレの日はおめかしして、グランメゾンにも行ってほしい。レストラン並みの存在感漂うビストロ料理を作ることで、フランス料理という文化のピラミッドが、下から上へ繋がるように。それが青木シェフの願いです。「でも、悩むことも多くて揺れ動きっ放し(笑)。だから基本は流れに任せているんですよ」。揺れ動くのは、常に時代の感覚を掴もうとしているから。数ある店の中で、シーンの先端を引っ張る人気の理由は、芯がありつつもしなやかな、そんなスタイルにあるのです。

シンプルで直球の料理名。シェフのオープンな性格が、店のあちこちから感じ取れる。料理をほぼアラカルトで提供するのは、一品だけでも楽しめるようにとの思いから

|EPISODE|

銀座の名ギャルソンの生き様に
今も導かれながら店を続ける

青木シェフを料理の道へ誘ったのは「ペリニィヨン」(現在は「ドン・ピエール」)元会長であり名ギャルソンの明永正範さん(2013年逝去)。「料理を学んだ訳ではないのですが、仕事に対する姿勢を身をもって教えてくれました。自分が知らないワインのことを話すお客さんに『それ知らないです。教えてください』と言える。取り繕うことはできるのに、そうしない正直な人でした」。迷った時、厳しかった明永さんを思い、自分を律するのだそう。

BRILLIANT!! NO1

シェフの個人的興味が生む“創作系”メニュー

ソースをご飯にかけるという新発想が生んだ牛テールごはん2,920円。トロトロに煮込んだ和牛テールと、鍋炊きの十八穀米、煮汁にフォンドボーと赤ワインを足して煮詰めたソースを小皿に取り分け、好みの塩梅に調整していただきます。隠し味のマデラ酒の甘みがご飯とマッチ。さらっとした口当たりで、〆に最高

BRILLIANT!! NO2

ザッツ・ビストロな定番にも個性が

フランスの漁師町でポピュラーなムール貝の白ワイン蒸し、ムール貝のマリニエール1,950円は、ココット鍋ごと豪快に提供。ビストロの定番中の定番、パテドカンパーニュ1,280円は、まるでガトーのように美しい盛り付けで。食器類にも気を使うアニス風味のブランマンジェとメロンのスープシャンパンのグラニテ1,080円。デザートは常時3種を用意。すべての料理をひとりでこなす青木シェフですが、ここでも手抜きはなし。しっかりした構成とポーションに満足必至。シェフ自身がお気に入りのパティスリーのスイーツにヒントをもらうことも

BRILLIANT!! NO3

食後のお楽しみにも創意工夫が光る

アニス風味のブランマンジェとメロンのスープシャンパンのグラニテ1,080円。デザートは常時3種を用意。すべての料理をひとりでこなす青木シェフですが、ここでも手抜きはなし。しっかりした構成とポーションに満足必至。シェフ自身がお気に入りのパティスリーのスイーツにヒントをもらうことも

振り幅の広さで人をワクワクさせる料理

メニューには、パテやキャロットラぺといったおなじみの料理の合間に、「牛テールごはん」など、聞きなれない料理名がちらほら。これらは、「クラシカルなソースをご飯にかけて食べてみよう」「ビストロで卵かけご飯を作るなら?」などのユニークな発想から生まれるもの。「フランス料理の技法は、あくまで手段のひとつ」と語る青木シェフ、「型にはまらないから、ソースを使わない料理もあります。皿の余白に垂らしたソースなんて、シェアしたらすぐなくなる。それなら、塩こしょうで味わい深くする方がいい。それに、いかにも手間暇かけたぜ!って主張した料理を出すのが嫌(笑)。それを見せず、ストレートに美味しいといわれたい」。飾らない青木シェフらしく、どの料理もメインの食材が素直に感じられ、重ねるフレーバーは、あくまで引き立て役。奥さまがセレクトするワインは、シンプルに勝負する料理に合わせ、おのずとシャンパンやスパークリング、白ワインが多くなるのだそう。

Le Bonzeルホ゛ース゛

Le Bonze

住所:
東京都中央区銀座4-10-1
銀座AZAビル3F
TEL:
03-5565-3055
【火〜日】18:00〜23:30(22:00L.O) 月曜日 日曜不定休
URL:
http://www.lebonze.net/






Photo:松園多聞
Text:唐澤理恵

※こちらの記事は2015年8月20日発行『メトロミニッツ』No.154に掲載された情報です。




更新: 2016年11月24日

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