これからの東京の農業

|EAT GOOD[13]|
TOKYO EAT GOOD STYLE
「東京野菜普及協会」前編

近所のスーパーでも、ネットの宅配でも、今は簡単に日本全国の新鮮な青果が手に入る時代です。しかし少し足元に目をやると、ここ東京にも真摯に農業を続ける生産者がたくさんいます。決して広大な土地で大量に生産しているわけではありませんが、彼らはその限られた条件の中でより良い作物を作るべく、工夫と努力を続けています。そんな東京の農業に従事する人たちに、会いに行きました。

東京野菜普及協会

旬の野菜が味わえる、先進都市へ!「農」と言えれば、東京はもっと強くなる

「東京野菜」という名前をどこかで聞いたことはありますか。練馬大根や谷中生姜、滝野川牛蒡といった「江戸野菜」とは少し違います。東京野菜は、東京23区、多摩地域、伊豆大島・小笠原・八丈島などの離島地域を含む、東京都全域で生産された農作物であり、「東京野菜普及協会」が提案するブランド名。東京野菜普及協会は、大田市場で3代続く仲卸会社「大治」代表の本多諭さんが発起人となり、この3月に設立されたばかりです。
「いえ、実は『東京野菜』の取り組み自体は、17~18年前から行ってきたものなんです」。お目にかかった本多さんは、まずこんな話をしてくれました。「東京には、大抵の作物が育つ土壌があります。つまり、例えば奥多摩の涼しい地域なら北海道でとれるような野菜も育ちますし、小笠原諸島なら沖縄でとれるような南国フルーツもとれるのです。東京は、北の寒冷地域でとれる野菜の南限、南の温暖な気候でとれる野菜の北限。最近では、新島でオリーブの木なんかも育て始めています」。東京は日本一の〝消費地?だが、実は〝生産地?としての価値も高いのではないか、と本多さんが考えたのが17~18年前のことだそう。初めは、練馬で農家さんへの飛び込み営業( !?)から始まり、一緒に作ってくれる仲間を見つけ、徐々に大きく成長してきた“東京野菜プロジェクト”。これまでには、作ろうとして失敗した作物も色々あるそうですが、地域の特産物的な存在にまで成長したものもあると言います。

例えば、練馬のキャベツ。今、練馬ではキャベツの生産が盛んで、中でもオススメなのが「しずはま」です。特段に柔らかくて美味しいけれど、傷みやすいのが悩みという品種で、流通に時間がかかるほど不利。よって、市場では評価を受けにくいことがありました。練馬では、それを「朝どり野菜」として売っています。さらに「キャベツ」という名ではなく、東京野菜の「しずはま」という名で販売したところ、今やお客さんも「キャベツ」とは呼びません。「しずはまは、今日はないの?」とお目当てに買いに来てくれる人も多いそうです。

写真は、練馬区、清瀬市、三鷹市の皆さん。現在、東京野菜普及協会に参加している農家さんは60数軒。それぞれ規模は小さいながらも専業農家が多く、近い距離で交流しながら皆で良いものを作っている。とうもろこし、りんご、しいたけ、奥多摩ではワサビの収穫可能で、23区から小笠原諸島まで合わせると、寒冷地域のもの、温暖な地域のもの、年間を通じて非常に多彩な野菜が育つ、珍しい地域と言える。

ところで、東京という社会の中で農業が果たすメリットと言えば、やはり「朝採って、何時間後には店に並ぶという新鮮さ」が何より。地方の産地から東京の店頭に運ぶ場合は、早くて1日半、通常は2日かかってしまいます。「葉物野菜など比べていただけば、明らかに違いがわかります。また、トマトのような果実野菜は、輸送の時間を考え、ある程度未熟な状態で収穫しますが、東京野菜ならば完熟状態で出荷できるので、これまたひと味もふた味も違います」と話すのは、本多さんの「東京野菜」活動の初期の頃からのパートナー、「大治」の堀将人さん。新鮮さが命の朝どり野菜ですが、試行錯誤もあったと言います。

「野菜を見分ける4つの要素というのがあります。それが、氏、育ち、頃合い、たて。『氏』は品種、『育ち』は栽培環境、『頃合い』は収穫時期、そして『たて』はとれたての〝たて?です。でも、とれたてだから美味しいという単純なことではなく、とれたての状態をどうやって維持するかが重要です。例えば、とうもろこしも40℃のトラックに載せて1時間運べばあっという間にダメになります。そのために、野菜を運搬する車は基本冷蔵車で温度管理をしっかりし、『東京野菜』は市場を通しません。なるべく早く小売業者に届けるようにしているのです」

Text:矢作美和(バブーン)

※こちらの記事は2016年6月20日発行『メトロミニッツ』No.163掲載された情報です。

更新: 2016年12月12日

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