これからの東京の農業

|EAT GOOD[12]|
TOKYO EAT GOOD STYLE
「大平農園」後編

近所のスーパーでも、ネットの宅配でも、今は簡単に日本全国の新鮮な青果が手に入る時代です。しかし少し足元に目をやると、ここ東京にも真摯に農業を続ける生産者がたくさんいます。決して広大な土地で大量に生産しているわけではありませんが、彼らはその限られた条件の中でより良い作物を作るべく、工夫と努力を続けています。そんな東京の農業に従事する人たちに、会いに行きました。

世田谷区/大平農園

大平農園の野菜を毎週定期的に直接購入する会員組織「若葉会」の定例行事に混ざって、見学に行きました。閑静な住宅地にあり、広さは1万㎡ほど。土は手にとるとふわりと柔らかく、嫌な臭みのない優しい香りがします。敷地内に農業用の井戸があり、畑を囲むように梅が植えられ、蜂蜜をとるための蜂の巣箱も置かれています。

「ここの畑で植える作物は年に15種類ぐらい。城南小松菜や『牛の角』という品種のねぎなどは、自家採取し続けてきた種で育てています。販売されている種にはすでに農薬をまぶしているものもありますから」と、美和子さん。

特別にその場でレタスをいただきました。明るい緑色で、口に含むと優しく心地いい歯触り。甘味や苦味など野菜本来の風味が鮮やかに感じられます。同行した若葉会の奥さまは言います。「味が全然違いますよね。ここの土は懇意にしている東京農大の土壌学の先生からも認められているんですよ」。

40年ほど前に近隣の主婦たちを中心に発足した若葉会では、月に1回、美和子さんを交えて意見交換会を実施してきました。美和子さんからの野菜の生育状況や、土壌など農園の環境の報告をはじめ、会員からの野菜の収穫時期の変更の希望、野菜のレシピの共有など、活発なコミュニケーションが行われています。「親戚より仲良しかも(笑)」と美和子さんは言います。都心の近くで育てられたおいしい野菜を中心に、生産者と消費者の間に、こんなに豊かなつながりがあるのです。

 

1. 月1回開催される若葉会の意見交換会は和気あいあいとした雰囲気。大平農園のお弟子さんが地方で営む農園への生産者訪問ツアーの計画も議題に上る 2. 右が大平美和子さん。左が先代の信彌さん時代の研修生でもあり、現在、大平農園の農作業をとり仕切る波多野 清さん 3、4. 会員への物理的距離が近い大平農園では、新鮮に届けられる葉物やトマト、キュウリなどの夏野菜が中心

会員でなくても野菜が買える”野菜直売所”!火・金 13:00オープン

畑から5分ほどの場所には、火曜日と金曜日のオープン時間内に自由に訪れて購入できる野菜直売所も。会員向けでも直売所でも、野菜はここ大平農園産のほかに、無農薬で化学肥料を使わずに育てられた千葉や群馬、長野などの農園のものも加わります。どの農家も美和子さんの父の時代の研修生で、現在は大平農園と同じやり方で農業を営んでいます。直売所は自分で精算する方式なので、小銭と野菜を入れる袋を持参するのを忘れずに!

1.会員向けの野菜のセット 2・3.個人会員は直売所の脇にある会員向けのコーナーから割り当て分を持ち帰るシステム4.グループ会員には決められた場所まで配送する

若葉会会員には近くに住む外国人の方も。10年近く直売所を訪れる常連さんは大田区から自転車で買いに来ているそう

ただひとつの大平農園の悩みが、後継者を探していること。生産者と消費者、どちらも高齢化が進んでいます。「食事は生きていく上で何より大切。この畑は必要な場所という気持ちがあってやめられないんです」と美和子さん。都心に残された食と農のユートピアを、本誌も応援したい気持ちです。

おおひらのうえん
住所:東京都世田谷区等々力4・23・5 

営業時間:直売所は火・金 13:00~18:00ごろのみ
「若葉会」への入会を希望される方は直接大平農園に訪れてお問い合わせください

Text:佐藤太志
Photo:山本尚明

※こちらの記事は2016年6月20日発行『メトロミニッツ』No.163掲載された情報です。

更新: 2016年12月6日

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