アメリカの潮流を読む

|“食べる”を見つめる映画[17]
「食事」×「映画」最前線 後編
〝ディナー×映画?の進化系「ラグジュアリーシネマ」

アメリカでは、“食事×映画”がトレンドです。それらは「シネマ・イータリー」、「ダインイン・シアター」、「ディナー・アンド・ア・ムービー」などと呼ばれ、様々なメディアで取り上げられて話題になっています。そんなアメリカのトレンドを追いかけてみました。

〝ディナー×映画?の進化系「ラグジュアリーシネマ」

先のショーエンフェルド氏が言う「ラグジュアリーシネマ」とは、一体何か。さらに話を伺ってみれば、ラグジュアリーシネマとは、ミシュランの星を獲得しているスターシェフの料理を提供するなど、料理も空間も、よりリッチで贅沢に楽しめる映画館のことを指すのだそうです。

確かに、前述の通り、映画の売上げは落ちています。しかし、MPAAの統計によれば、「頻繁に映画に行く人々」の中で、40歳以上の人数は増加傾向(2014年は120万人増加。前年と比較して3%増に当たる)。特に、60代以上の販売シェア( 13%)は、2011年から連続して最も高くなっています。現在の60代以降の人々は、一昔前の60代以降の人々とは違い、健康で高収入、高学歴の人たちが多くなっており、しかも、これまで体験したことがない何かをしてみたいと、いつも新しいことを探している世代なのです。ラグジュアリーシネマは、そんな成熟した大人たちに熱く支持されています。

その代表格と言えるのが、2006年にオープンした「アイピック・シアターズ」。今年の11月にマイアミビーチとヒューストンに1館ずつ増えるそうで、全米合計13館になります。ここは、高級ホテルのように洗練されたラウンジエリアがあり、レストランやバーも併設、映画前も後も楽しめる設定です。映画鑑賞中は、コールボタンを押して食べ物やドリンクの注文を聞いてくれるウェイターサービスが利用可能。提供する料理は、ロブスターをパンに挟んだロブスターロールや、フィレ・ミニョンのスライダー(小さいサンドイッチ)など、グルメフードがふんだんに使われています。また、ドリンクならミクソロジスト(あらゆる食材を使ってカクテルを作る〝混ぜるスペシャリスト?)を雇い、液体窒素カクテル(液体窒素を使って白いスモークを発するカクテル)などが楽しめます。しかも、通常よりサイズが大きくて広いリクライニングタイプのレザーシートで鑑賞し、毛布や枕付きですから、まるで自宅のような居心地です(無料のポップコーンと水のボトル付き)。このラグジュアリーシネマは、アメリカではさらに拡大していく業態だと注目されています。

スターシェフも登場する〝食?がテーマの映画祭も

シリーズの最後に、映画館ではなく映画祭についても少しだけご紹介します。最近、「フード」をテーマにした映画祭〝フード・フィルム・フェスティバル?も、シカゴやロサンゼルスなど、アメリカの至る所でよく開催されるようになりました。

例えば、「映画館で食にフォーカスしたドキュメンタリーや短編映画を観ながら、映画に出てくる料理を食べること」。そんなスタイルで、今年9回目の開催となったのが、ニューヨークの「フード・フィルム・フェスティバル」。今年は、タイムズスクエアにて4日間、延べ1000人が参加しました。VIP向けの前夜祭ではミシュランの星付きシェフ、ブラッド・ファメリエ氏のレストラン「パブリック」の料理がパーティ会場を彩り、一般会場では毎日約30種類の料理が提供されて、連日、大いに盛り上がったそうです。このフード・フィルム・フェスティバルは過去8年間で3万人以上が参加し、今年はチャールストンでも開催。

このアメリカの加速し続ける〝食事×映画?の潮流が東京までやってくる日も、そう遠いことではないのかもしれません。

Food Film Festiva(l フード・フィルム・フェスティバル):2002年からニューヨークで開催されている食がテーマの映画祭。将来は、食にフォーカスを当てコース料理を提供する映画制作機関を設立予定。ちなみに、収益はニューヨークで食事の無料提供を行う貧困支援団体などに寄付される

Text:大山真理

※こちらの記事は2015年10月20日発行『メトロミニッツ』No.156掲載された情報です

更新: 2017年2月20日

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