[Tokyo Elite Restaurant]
le vin quatre

北野智一

文:河崎志乃 写真:今井広一

全神経を集中し食材に向き合う真剣な眼差し。そして、料理への愛を語る穏やかな笑顔。ただひたすらフランス料理の道を歩んできた北野智一さんのその表情には、受け継いできたものへのたしかな自信と、「美味しさ」への情熱がこもっています。

北野智一(きたの・ともかず)

1979年兵庫県生まれ。大阪あべの辻調理師専門学校 フランス校在学中に当時ミシュラン一ツ星レストラン(現在は二ツ星)「ギィ・ラソセ」で修業。帰国後、恵比寿「ル・レストラン・ドゥ・レトワール」でクラシックなフランス料理を学び、中目黒「コム・ダビチュード」を経て、フランスの伝統的な内蔵料理でられる西麻布「ル・ブルギニオン」で7年9カ月スーシェフを務める。2013年3月、オーナーシェフとして目白に「ル・ヴァンキャトル」をオープン。

幼い頃から定まっていた、料理人への志

銀杏並木が続く目白通り沿いに店を構える、小さなフランス料理店「ル・ヴァンキャトル」。店内には壁いっぱいの大きな絵画が飾られ、鮮やかな色彩でお客様を温かく迎えてくれます。オーナーシェフの北野智一さんは、2013年3月に34歳でこの「ル・ヴァンキャトル」をオープン。料理の道に入った時から抱いていた、「自分で店を開き、シェフになる」という夢を叶えました。初めて料理の楽しさに目覚めたのは小学校4年生の時。家庭科の調理実習で、どうせなら美味しい料理を作ろうと、自宅の裏山で採った自然薯を使ってお好み焼きを作ったのだそうです。誰よりも手際よく美味しい料理を作り、先生にも大いに褒められたという北野さん。それから当時人気のテレビ番組『料理天国』で見たコック帽に憧れ、小学校の卒業文集にはすでに「シェフになる」と書いていたのだそうです。

高校では簡単なフランス語を覚えるなどして準備を整え、大阪あべの辻調理師専門学校に進学。フランス校に進み、老舗レストラン「ギィ・ラソセ」で修業を積みました。帰国後は恵比寿「ル・レストラン・ドゥ・レトワール」、中目黒「コム・ダビチュード」を経て、西麻布「ル・ブルギニオン」のスーシェフに。

「最初の『ル・レストラン・ドゥ・レトワール』では、料理はもちろん、まず社会人として働くにはどうしたらよいかということを学びました。次の『コム・ダビチュード』では、これでもかというくらい仕事をこなし、3年間で一番下のセクションからスーシェフまで経験しました。そして『ル・ブルギニオン』では店の経営に必要なことも教わりながら、7年9カ月スーシェフを務めました。今振り返ると、素晴らしい修業先に恵まれたと思います」。

【鮪のキャンディ】
キャンディのように見えるのは、もっちりとしたマグロの赤身に香ばしいチーズを合わせたもの。セイコガニは、外子と胴の身を合わせて薄く焼いたシートに内子と脚の身を和えたものを載せ、風味豊かに仕上げています。

そして独立し、念願のオーナーシェフに。その頃には結婚し小さな子供もいたとこから、「子供連れでも、家族で楽しんでいただける町のフランス料理店」として、目白に「ル・ヴァンキャトル」をオープンしました。料理はこれまで学んできたクラシックなフランス料理がベース。体に叩き込まれた感覚を頼りに、細やかに料理を仕上げていきます。

「私の店にはコンベクションオーブンもなく、芯温計も使いません。肉を焼くときは、肉に刺した針を唇に当てて温度を感じ取り、そこからキッチンのどの場所で何分置けば理想の仕上がりになるかを自分の頭で判断しています。この感覚を持っていると、どんなに忙しくてもお客さまをお待たせすることはないんですよ」と北野さん。厳しい修業で培われたフランス料理の確かな基礎が、この店の味を支えます。

正統派なフランス料理を守りつつ、自分らしさを加えて

【パンタード・ブレス】
解禁されたばかり(取材時)のフランス・ブレス産のホロホロ鳥。艶やかに焼き上げられた身が心地よく舌にあたる。フォワグラのポワレも「これぞフランス料理!」と叫びたくなるおいしさ。一度は食べてほしいひと皿。

北野さんの料理の魅力は、なんといってもクラシックなフランス料理が楽しめること。丁寧にとったフォンにマデラ酒やポルト酒、内臓などを合わせほんのりとバターを効かせたソースは、どこか懐かしい正統派の味わい。オマール海老やホロホロ鳥、鴨など、フランス産の上質な食材も豊富に使っています。

「しばらく輸入が停止されていたフランスの家禽もつい最近(取材時)解禁されました。今回のホロホロ鳥なども良い食材ですから、また積極的に使っていきたいと思っています」と北野さん。また、そのホロホロ鳥に添えられたフォワグラのポワレも絶品。カリっと焼き上げられた香ばしさとともにフォワグラの濃厚な風味が広がり、「これぞフランス料理!」と言いたくなるおいしさです。

【〆鯖と根セロリ】
修業時代に根セロリを切り続けていたとき、昆布のような香りを感じ取ったという北野さん。そこで、昆布締めのイメージで鯖と根セロリを合わせ、さらに根セロリと相性の良いトリュフをプラスして、新しい味わいを表現。

一方、国産の食材にもこだわりが。野菜は北野さん自身が早朝に鎌倉まで買いに行っているのだとか。「〆鯖と根セロリ」のシャドークイーンや「本日のおさかな」の黒キャベツなど、どれも鮮やかな色彩や食感、味わいを楽しむことができます。また、北野さんの故郷・兵庫県の食材も多数登場。漁期が短く貴重な香住(現 美方郡香美町)のセイコガニや、兵庫県西脇市黒田庄町で育った希少な但馬牛「黒田庄和牛」など、他ではなかなか食べられない食材の魅力を知ることができます。そして魚はその日いちばん状態の良いものを仕入れるので、種類は日替わり。真ハタや真鯛などのほか、太刀魚、甘鯛、ホウボウ、カサゴ、時にはアンコウを扱うこともあるのだそうです。

【本日のおさかな】
その日によって、太刀魚、甘鯛、ホウボウ、カサゴ、アンコウなど、使う魚はさまざま。力強い味わいの真ハタには、赤ワインのソースを合わせて。北野さん自ら鎌倉まで買いに行くという季節の野菜が、味わいに華を添える。

【ブーダンのイカ墨エクレア仕立て】
「ル・ヴァンキャトル」のスペシャリテともいえるひと皿。フランスで古くから親しまれているシャルキュトリ“ブーダン ノワール”を、北野さん流にアレンジ。軽やかな味わいを新生姜でキリリと引き締める。

さらに、クラシックなフランス料理をベースとしつつ、自由な発想を加えているのも北野さんらしさのひとつ。「ル・ヴァンキャトル」のオープン当初から作り続けているという「ブーダンのイカ墨エクレア仕立て」は、フランスではおなじみの伝統料理「ブーダン ノワール」をアレンジ。修業時代にイカ墨と内臓の相性が良いことを発見した経験から、レバーのような風味のあるブーダン ノワールをイカ墨の軽やかな生地で挟み、生のリンゴとリンゴのピュレを合わせてやさしい味わいに。さらに赤ワインで煮た新生姜を添えて、ピリっとシャープな辛さで全体を引き締めています。

伝えられたものを大切に、次の世代へ伝えていく

「ブーダンのイカ墨エクレア仕立て」と同じく、「〆鯖と根セロリ」も修業時代の経験から生まれたひと皿。ひたすら根セロリを切っていたときにふと昆布のような香りを感じたことから、鯖を昆布締めにする代わりに根セロリのピューレと生のサラダを合わせ、さらに根セロリと相性の良いトリュフを合わせました。根セロリのサラダに使ったナッツの香ばしさやトリュフのビネグレットソースの酸味で、味わいに一層の深みを出しているのもポイント。根セロリを媒介に鯖とトリュフというさらに意外な組み合わせも実現したこの料理には、修業先での経験を大切にし、さらにおいしさへの飽くなき探求心を持つ北野さんの人柄が表れています。

小学4年生で料理の楽しさに目覚めたときからずっと変わらず、今も料理を作って「美味しい」と言ってもらうのが何よりも嬉しいという北野さん。

「料理人は皆一緒だと思います。『美味しい』と言っていただくのが生きがいで、それがあるからこそ頑張れるんです。ですから、今修業している若い料理人の皆さんも、自分で店を出したときに『美味しい』とお客さまに言っていただけるように、しっかりと育っていってほしいですね。『ル・ヴァンキャトル』はたくさんのスタッフを抱えることはできませんが、小さな店だからこそ伝えられることもあると思っています。フランス料理の基礎を学びつつ、自分ならではのスタイルを見つけていってほしいですね」と語ってくれました。

ニコニコと楽しそうに食事をするお客さまの顔を見るのを楽しみに、今日もキッチンに立つ北野さん。「修業先の味をしっかりと引き継いでいる」と言っていただくのも大きな喜びなのだそうです。それぞれに大切なことを教えてくれた修業先を経て、「シェフになる」という夢を実現した「ル・ヴァンキャトル」。この店がある限り、北野さんは料理を作り続けると心に決めているといいます。そんな北野さんの人生とフランス料理への愛が詰まった料理を、あなたもぜひ一度味わってみてください。

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le vin quatre

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ル ヴァンキャトル

エリア
目白
ジャンル
フランス料理
営業時間[昼]
11:30~13:00(LO)
営業時間[夜]
18:00~20:30(LO)
定休日
水曜日

le vin quatreル・ヴァンキャトル

営業時間[昼]:11:30〜13:30LO
営業時間[夜]:18:00〜21:00LO

住所:
東京都豊島区目白2-3-3
目白Yビル 1F
TEL:
03-5957-1977

文:河崎志乃 写真:今井広一

更新: 2018年2月6日

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