[Tokyo Elite Restaurant]
A nu, retrouvez-vous

下野昌平

文:河崎志乃 写真:松園多聞

東京・広尾のフレンチレストラン「ア・ニュ ルトゥルヴェ・ヴー」。広々とした空間は上質でありながら、どこか温かな空気が感じられます。ここで下野さんが追い求めるのは「ありのまま」。料理人も、料理も、お客さまも、ありのままに。

下野昌平(しもの・しょうへい)

1973年山口県生まれ。辻調理師専門学校 フランス校を卒業後、六本木の「ヴァンサン」で4年半、西麻布の「ル・ブルギニオン」で3年修業。2003年に渡仏し、ロアンヌの「トロワグロ」、パリの「タイユヴァン」で研鑽を積み、2006年リヨン旧市街のワインショップ「アンティックワイン」を経て帰国。2007年から代官山の「ル・ジュー・ドゥ・ラシエット」でシェフを務めたのち、2009年10月、広尾に「ア・ニュ ルトゥルヴェ・ヴー」をオープン。

本場フランスでその魅力に触れ、腕を磨いたフランス料理

「最初はね、カレー屋さんをやりたかったんですよ。高校生の頃にずっと通っていたお気に入りのカレー屋さんがあって。それで辻調理師専門学校に入ったのですが、行ってみたらカレー科がないじゃないですか。それじゃあ、ということでフランス料理の方へ進んだんです」。そうにこやかに語り始めたのは、2009年のオープン以来、広尾で愛され続けているフレンチレストラン「ア・ニュ ルトゥルヴェ・ヴー」のオーナーシェフ 下野昌平さん。フランス料理への情熱は、辻調理師専門学校のフランス校へ進学したときに目覚めたといいます。
「フランス校は全寮制でシャトーに住み、シミュレーション実習などを行うのですが、そこで料理を作るのがとにかく楽しくて。フランス料理の魅力を感じることができました」。

そして辻調理師専門学校 フランス校を卒業後、帰国し六本木「ヴァンサン」へ。「『ヴァンサン』は約4年半といちばん長く修業したお店です。ここでクラシックなフランス料理の基礎を学びました。その次に西麻布『ル・ブルギニオン』で約3年。内臓を使ったものなど特徴のある料理が人気で、ここで技術の幅が広がったと思います」。その後再びフランスへ渡り、ロワンヌ「トロワグロ」とパリ「タイユヴァン」で約3年間、料理の腕を磨いた下野さん。当時はまだ、フランスでは日本人の活躍の場は少なかったそうですが、下野さんは責任あるポジションを任され、店の運営などについても学ぶことができたといいます。

【レンコンの一皿】
新潟県長岡市で採れるレンコンの芽の部分を使ったアミーズ。甘く香り高いレンコンの新芽を素揚げして、穴の部分にキノコとクリームチーズのペーストを詰め、乾燥させたキノコや生ハム、ハーブをあしらっている。

「『タイユヴァン』は誰もが知るクラシックフレンチの名店。『トロワグロ』もメニューはクラシックですが、素材の使い方や調理法、盛り付けなどにはモダンな一面もありました。そしていずれの店でも個人が尊重され、仕事を教えるにも丁寧な接し方をされました。そこで学んだスタンスは、今の私のキッチンでも活かされていると思います」。「トロワグロ」「タイユヴァン」で修業した後は、ワイン好きな下野さんが修業中よく足を運んだという「アンティックワイン」で研修。フランス人が日常の中で楽しむワインから珍しいビンテージワインまでフランスのワインを幅広く学び、帰国ました。そして代官山「ル・ジュー・ドゥ・ラシエット」で約2年間シェフを務めたのち、2009年10月、広尾に「ア・ニュ ルトゥルヴェ・ヴー」をオープンしたのです。

シェフもお客さまも。ありのままの自分を見つける空間

「ア・ニュ ルトゥルヴェ・ヴー」のコンセプトは「ありのまま」。「この店では、料理のレシピは特に書き留めていません。ですから、この冬、去年の冬と同じ料理を作るにしても、その仕上がりは違っていると思うのです。でもそれが、今の私がおいしいと思う料理。ありのままの私が表れた料理なんです」。素材も「ありのまま」にこだわり、手を加えすぎず、厳選した季節の食材そのものの良さを感じられる、どこか懐かしい味わい。さらに、それに合わせて用意しているワインは400種1,000本以上。下野さんの「ありのまま」の料理の魅力をさらに引き出します。

「この店では私の料理だけではなく、お客さまにも『ありのまま』になってほしいと思っています。レストランは非日常の空間ですから、何日も前から何を着ていこうか、どんな料理が出るのかと楽しみにしていただいて、高揚感を持ってお越しくださると思います。お客さまによっては緊張感や、不安だってあるかもしれない。店に足を踏み入れるまではお客さまによってさまざまかもしれないけれど、この空間で料理とお酒を楽しみ、リラックスしてありのままにご自分に戻っていただきたいんです。最後は自然体のありのままでお帰りいただいてこそ、また行きたいと思っていただけるはずですから」。

【イノシシの一皿】
島根のハンターから取り寄せた猪のロティ。季節感あふれる色鮮やかなプレゼンテーションも印象的だが、この料理の命は素材。下野シェフがこだわりにこだわり抜いて探し出した素材の味を存分に味わいたい。

そんな下野さんが作る料理は、美しさの中に素材の魅力をダイレクトに伝える潔さが感じられます。アミューズの「レンコンの一皿」に使っている芽レンコンは、新潟県長岡市の生産者を訪れた際に出会ったもの。新芽ならではの力強い香りと甘味、旨味がありながら、規格外商品として廃棄されることさえあると聞き、店で買い取って使っています。素材の形を活かすように大きくカットして素揚げした芽レンコンは味わい深く、一般に流通しているレンコンとはまた違ったおいしさを楽しむことができます。「イノシシの一皿」は、島根の決まったハンターから仕入れている猪を使用。「どれだけ良い素材を見つけてくるかというのもシェフの仕事の一つ。火入れの技術やソースの腕では補えない力を素材は持っていますから。素材そものものが料理の命なんです」。

海外にも新店をオープン。ア・ニュのエスプリを世界へ

今後は海外、特にアジアへの出店にも興味があるという下野さん。来年には香港の「ハーバーシティ」に初の海外店舗をグランドオープンします。「これまでは海外での日本食というと、寿司やマグロなど料理や食材そのものが注目されていましたが、今では海外のお客様も日本食を見る目が成熟してきています。同じ寿司にも良し悪しがあり、マグロにも良し悪しがある。“日本産”というだけでは満足しなくなり、それを調理する料理人の質、日本人シェフならではの細やかさ丁寧さというアイデンティティが求められるようになってきているのです。フランス料理も、今、アジアでは日本人シェフの店が求められつつあるのですよ」。

【コハダの一皿】
下野シェフが大好きだというコハダを使ったひと皿。薄いトーストにトマトペーストを塗り、白バルサミコ酢で締めたコハダと生のマッシュルームを載せている。手でつまみながら、シャンパンと合わせて楽しみたい。

海外でもやっと、「日本人が作る料理」という信頼を求めてお客様が集まる時代になってきたと語る下野さん。これまで日本の料理人として真面目に料理と向き合い信頼を培ってきた先人たちに感謝しつつ、今、このチャンスを逃さずに挑戦したいといいます。

【モンブランのアイスクリーム】
シェフパティシエが手がける、目にも鮮やかな季節のデザート。栗を使った“モンブランのアイスクリーム”。フランス領 マルティニーク島で作られたラム酒が香り高く、ゆずのピューレと栗の相性も絶妙。

また、日本国内でも2017年4月、「GINZA SIX」に姉妹店「ロムデュタン シニエ ア・ニュ」をオープン。「ロムデュタン シニエ ア・ニュ」では「ア・ニュ ルトゥルヴェ・ヴー」で長らくスーシェフを務めた簑原祐一さんをシェフに、そして「ア・ニュ ルトゥルヴェ・ヴー」には同じくスーシェフを務めていた牛之濱慎吾さんを新シェフに任命し、下野さんはエグゼクティブ・シェフとして全体を監督しています。

「今は自分1人で小さな店をやるよりも、ある程度の規模のレストランを展開することにこだわりたいですね。多くのスタッフを使い次世代の人材を育てることも、日本のフランス料理界の一員として大切な役目のひとつですから。お客さまに『おいしい』と言っていただくのがもちろん私のいちばんの喜びですが、スタッフとの信頼関係も嬉しいことなのです。私自身もこれまで素晴らしいシェフたちに育てられ、多くの方のおかげでここまで来ることができました。その恩返しとして、僕を慕ってついてきてくれる次の世代の人たちがチャンスを掴む手助けをしたい思っています」。

そう熱く語ってくれた下野さんのエスプリが息づく「ア・ニュ ルトゥルヴェ・ヴー」。あなたも足を運んで、その魅力を感じて。

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à nu, retrouvez-vous

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ア・ニュ ルトゥルヴェ・ヴー

エリア
広尾
ジャンル
フランス料理
営業時間[昼]
11:30~15:00(13:30LO)
営業時間[夜]
18:00~23:00(21:00LO)
定休日
火曜日 ※ほか月1~2日の不定休あり

à nu, retrouvez-vousア・ニュ ルトゥルヴェ・ヴー

[昼]11:30〜13:30LO
[夜]18:00〜21:00LO

住所:
東京都渋谷区広尾5-19-4
SR広尾ビル 1F
TEL:
03-5422-8851
定休日:
火曜日(その他不定休あり)
URL:
http://www.restaurant-anu.com/

更新: 2018年1月17日

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