[Tokyo Elite Restaurant]
Jean-Georges Tokyo


米澤文雄

文:浅井直子 写真:竹内洋平

NYの3ツ星レストラン「Jean-Georges」にて、日本人初のスーシェフにまで上り詰め、現在、「Jean-Georges Tokyo」の総料理長を務める米澤文雄シェフ。幼い頃からの夢を現実にした米澤シェフですが、渡米のきっかけは、意外にも日本のイタリア料理店でのホール経験でした。

米澤文雄(よねざわ・ふみお)

東京都出身。1980年生まれ。高校卒業後、恵比寿「イル・ボッカローネ」経て、単身ニューヨークへ。インターンを経て「Jean-Georges」にて、日本人初のスーシェフとなる。帰国後、「KENZO ESTATE WINERY」でエグゼクティブシェフなどを経て、2014年「Jean-Georges Tokyo」オープン時より、シェフ・ド・キュイジーヌに。

お客さんからもらった拍手が忘れられず、単身NYへ。

「料理人になりたい」―はっきりと自覚が芽生えたのは、小学3年生の時。「母の料理の手伝いが楽しくて。味噌汁の味噌をとく簡単な作業から始まって、揚げ物や、チャーハンを作るようになって。母も、“そんなに料理が好きなら、料理人になったら?”と後押ししてくれました」と話す、「Jean-George Tokyo」のシェフ・ド・キュイジーヌ、米澤文雄さん。その意志は成長しても変わらず、高校卒業後は一刻も早く調理経験を積みたくて、恵比寿のイタリア料理店「イル・ボッカローネ」に飛び込みます。「最初はホールからスタートして、4年弱位いました。ゴミ捨て場の掃除や、野菜の下処理から始まって、魚の取扱いなど、ここで学んだことが、自分の料理の基礎を支えています」。

さらに、その後のNY行きを決定づけたのも、ここで体験した出来事があったからこそ、でした。「ホールをやっていた当時は、英語もイタリア語も話せるプロの先輩たちが働いていてかっこよかった。接客のために英語を学び始めたのもその頃です。ある日、アメリカ人の団体のテーブルを接客していた時のこと。いつものように接客していたら、帰り際、今日はありがとう!とスタンディングオベーションを受けたんです(笑)。向こうの方ってリアクションも大きいのでとてもインパクトがありました。こんな人たちが暮らしているアメリカに行ったら面白いんだろうな、という直感が働いて」。後に働く「Jean-George」のことも知らなかったと笑う米澤さんは、こうして、NYへ旅立ちました。

NYでは、日本食レストランでインターンとしてキャリアをスタート。いろいろな店を見てみたいと、週1回は、別の店の見習いをこなす日々。そんな中、当時、ザガットで高得点を獲得し、「ぴかぴかに磨いた銅鍋が店の外からでも見えてかっこよかった」店、「Jean-George」に出合い、見習いで入るチャンスを得ました。実際に働いてみると、「他の店と全く違って統率が取れている」現場に驚き、実力店の底力を見せつけられます。そして、見習いとして店に行った3回目に、本格的に働かないかという嬉しい誘いが。一番下のポジションから入った米澤さんは、様々なポジションを回り、入って3年目には、日本人初のスーシェフの座まで上り詰めたのです。

ジャン・ジョルジュのDNAが詰まった白いコックコート

話を伺いながら、ふと気になったのが、米澤さんが身に付けているコックコートの胸ポケット周りです。よく見ると、真っ白なコックコートに、白い糸で米澤さんの名前が刺繍されています。
「ジャン・ジョルジュはよく言うんです。“きれいにかっこよく仕事をしろ”と。彼は、本当にきれい好きですが、それは盛り付けの美しさや、厨房の清潔さに留まらないんです。シェフとして生きる姿そのものも含めて“きれいに、かっこよくあれ”という意味なんです。だから、このコックコートひとつとってもそう。ジャン・ジョルジュはどの店舗もすべて、白い生地に白い糸で名前が刺繍してあります。それは、清潔感があるし、かっこいいからです」と、師であり、世界中のセレブリティを顧客に持つ三ツ星レストラン「Jean-George」のシェフ、ジャン・ジョルジュの美学を披露する米澤さんがポケットから取り出したのは、複数のプラスチック製スプーン。

「僕たちは、胸ポケットにボールペンなどを差しません。その代わり、入っているのは、このスプーンです。1度テイスティングに使ったら、その場で捨てます。常にきれいなスプーンでテイスティングする。NYの時もある有名なシェフが見学しに来たのですが、そのシステムには驚いていました」。

東京店では、日本の食文化を愛するジャン・ジョルジュにより、割烹スタイルからインスパイアされたフルオープンのカウンターキッチンが特徴です。シェフの手元までしっかり見えるキッチンゆえに、常に美しく。その美学は、ここ東京でもしっかり息づいています。

オープンキッチン。オープンマインド。常に気持ちはお客さんへ。

「Jean-George」でスーシェフを1年弱務めた米澤さんは家の事情もあり、2007年に帰国。その後、六本木の大型ラウンジレストランなどで、総料理長を務めるなど、キャリアを順調に積み重ねていきますが、ある日、転機が訪れます。
「日本が好きなジャン・ジョルジュは、ちょくちょく来日していました。そのたびに、飲みに誘ってくれて、近況報告をしていたのですが、2013年に会った時に、ジャン・ジョルジュから“実は東京に店を出そうと思う。ついては、料理長をやらないか”と言われて。嬉しかったですね。東京でやるなら、NYの旗艦店と、他のお店、すべてがミックスしたような贅沢な“Jean-George”にしたいねと意気投合しました。「Jean-George Tokyo」に来たら、「Jean-George」のすべてがわかるお店にしたかった」

米澤さんが修業していた頃は、ジャン・ジョルジュはとても厳しい人だったと言います。「でも、僕は、ジャン・ジョルジュと闘わなかったんです」と笑います。
「ジャン・ジョルジュは何をしたらいいかわかっている人で、そこでディスカッションしても仕方ないんです。彼が言ったことや考えを、自分の中で推考して、行動に移します。この店のキッチンを作る時も、日本人やヨーロッパ人は、自分たちのしたいように、アーティスティックに作るかもしれません。でも、ジャン・ジョルジュは違います。お客さんの方を向いていて、それはお客さんの眼から見てどう映るか?ということを最優先して判断しています。それはある意味、とてもアメリカ的な考え方かもしれません。ジャン・ジョルジュ自身はフランス人ですが、合理的に物を考えられる人。最終的にどこにゴールを設定するかによって、意識も変わってくると思いますし、そのゴールが同じ方向を向いているなら、プロセスは特に気にならないはず。僕もジャン・ジョルジュと同じで、お客さんの方を向いて料理をしている。どうしたら、お客さんが満足して、喜んでもらえるだろうか?を考えています」

ジャン・ジョルジュが、米澤さんを全面的に信頼しているのは、料理の技術はもちろんのこと、ゴールをきっちり描くことができ、そのために何をしたらいいか、自分の頭で答えを導き出せる姿勢を高く評価していたからなのでしょう。「お客さんの方を向いて仕事をする」―それは、米澤さんが最初に喜びを感じた、「イル・ボッカローネ」での接客での記憶にも繋がります。そんな米澤さんが、考える理想の料理とはなんでしょう?
「ジャン・ジョルジュの料理って、とてもシンプルなんです。いま、どんな食材を食べさせたいのか? どんな味で食べさせたいのか?が、とてもはっきりわかる。だから僕は、ジャン・ジョルジュの料理がすごく好きなんです。レストランで過ごす時間って、今日は少し嫌なことがあったけれど、美味しいものを食べていい気分になって、また明日から頑張ろうと思える。僕は、そういう場所だと思っています。なので、これは何が入ってるんだろうと考えさせる料理じゃなく、パクッと食べて、すごくおいしい!と思ってもらえるような料理を作りたいです」

休日もアクティブに過ごす米澤さんは、仕事も遊びも育児もきっちりこなすお父さん=「スーパーダディ」を増やそうと、NPO法人「スーパーダディ協会」に参加し、食に関する活動を担当しています。お台場に子供と一緒に農園を耕し、収穫できたらそこでバーベキューをするなど、今後様々な活動を展開していく予定だそう。さらに、来年越後妻有で開催される、3年に1度の「大地の芸術祭」には、イベントの食に関する監修も手がける予定。オープンキッチンで日々腕をふるうシェフは、気持ちもオープンで、活動の幅を広げています。今後の動きも目が離せません。

東京でもNYと同じ「Jean-George」のシグネチャーメニュー、「エッグキャビア」を提供。味わい豊かな大分県産の卵「蘭王」で柔らかなスクランブルエッグがベース。生クリームにウォッカとレモンジュースを加えたウォッカクリームをのせて、その上にはたっぷりのキャビアが。卵とクリームのなめらかなコクに、キャビアがリッチなアクセントを添える、贅沢なスターターです。

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Jean-Georges Tokyo

Jean-Georges Tokyo

ジャンジョルジュトウキョウ

エリア
六本木
ジャンル
フランス料理
営業時間[昼]
11:00~16:00(14:00LO)
営業時間[夜]
17:00~0:00(21:30LO)
定休日
なし

[Tokyo Elite Restaurant]
世界に自慢したいフランス料理のシェフ


美食大国日本。
世界一の美食の街と謳われる、食都「TOKYO」。
ミシュランガイドの星の数においては世界最多を覆得し、その実力を世界に知らしめました。
ここ東京は、世界中の美食家たちを魅了するワールドクラスの実力店がひしめき合っているのです。
その中でも、グルメシーンの最前線を雄飛する、選りすぐりの精鋭シェフたちの存在。
そんな店の作り手でもある、凄腕の料理人たちが腕を振るう飲食店のことを、私たちは「東京エリートレストラン」と敬意をもって名付けることにしました。本企画はそのようなシェフたちを自信を持って世界に自慢したいという思いからはじまりました。

異彩を放つ精鋭シェフたちの背景にある物語や、様々なエピソードを綴っていきたいと思います。

Metro min.WEB編集長
渡辺 弘貴

Jean-George Tokyoジャンジョルジュトウキョウ

営業時間 [昼]11:00~15:00(LO14:00) [夜]17:00~24:00(LO Food21:30/Drink22:00) テラス席 11:00~22:00

住所:
東京都港区六本木6-12-4
TEL:
03-5412-7115
URL:
http://www.jean-georges-tokyo.jp/

文:浅井直子 写真:竹内洋平

更新: 2017年11月21日

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