[Tokyo Elite Restaurant]
Amour

後藤祐輔

文:河崎志乃 写真:今井広一

大通りから一歩入った、恵比寿の閑静な一角にたたずむ一軒家レストラン「アムール」。クラシックなフランス料理店を思わせる上質な空間で供されるのは、日本人シェフである後藤さんが自由な感性で生み出す、唯一無二の料理たち。

後藤祐輔(ごとう・ゆうすけ)

1979年東京都生まれ。辻調理師専門学校 東京校からフランス校に進学し、在学中にアルザスの「オー・クロコディル」で修業。帰国後「レカン」で約4年間フランス料理の基礎を学び、25歳で再渡仏。星付きレストランやシャルキュトリ店などで研鑽を積み27歳で帰国。「カンテサンス」「オトワレストラン」を経て30歳で「エキュレ」のシェフに。2012年、西麻布にオープンした「アムール」のシェフに就任し、2016年、恵比寿に同店を移転。

「このまま終わるわけにはいかない」と駆け上がった料理の道

「日本の料理人として、今、私が感じるままに作る料理を食べてほしい。ですから、今の店には“フランス料理”という言葉は掲げていないんです」。そう語るのは、「アムール」のシェフ、後藤祐輔さん。2012年に西麻布で同店をオープンし、その年にミシュラン一ツ星を獲得。「日本のフランス料理」として評価を受けつつも、2016年の恵比寿への移転を機にそれまでのフランス料理の枠を取り払い、より自由なスタイルを花開かせました。そして今なお一ツ星を守り続け、国内外のお客さまから広く愛されています。

そんな後藤さんですが、料理人としてのスタートは決して楽なものではなかったのだとか。辻調理師専門学校のフランス校に進学し、在学中に修業したアルザスの「オー・クロコディル」。仕事も言葉もわからずにいきなり飛び込んだミシュラン三ツ星レストランの厨房は厳しく、後藤さんは全く受け入れられないまま1年間の修業期間を終えて、不甲斐ない思いとともに帰国したといいます。「もう料理人なんてやめてしまいたい」というほど辛かったけれど、その思いは「このまま終わるわけにはいかない」へ。そこから後藤さんの本当の修業が始まりました。

帰国後、銀座の名店「レカン」へ。約4年間で一からフランス料理の基礎をしっかりと身につけ、フランス語の語学学校にも通いました。そして25歳で再びフランスへ。アヴィニョンの一ツ星レストランをはじめ、プロヴァンスやバスクなどでフランス料理の原点とも言える地方の料理を学びました。「二度目のフランスはとても楽しかったです。フランスの人たちも私を受け入れてくれて。アヴィニョンの一ツ星レストランではやりがいのある部門を任せてもらい、努力が評価されたことを実感しました」。

そして再び帰国した後藤さんは、「カンテサンス」の岸田周三シェフと出会うことで、また大きな転機を迎えます。「それまでの私には“フランス料理とはこういうものだ”という頑なな方程式があったのですが、岸田さんの料理を見て、“もっと自由で、自然体でいいんだ”ということを知りました。そこから改めて自分自身の目指すべき方向性を考え始めるようになったんです」と後藤さん。その後、宇都宮の「オトワレストラン」や「エキュレ」を経て33歳で「アムール」のシェフへ。日本やデンマーク、南米・北米の要素を取り入れ今やボーダレスとなったフランス料理の世界で、後藤さんは日本人として日本にこだわりながら、自身が感じるままに自由に表現するスタイルを追求しました。

【栗拾い 〜栗・青リンゴ〜】 森の中での栗拾いの情景を切り取った、秋のアミューズ。和栗とフレッシュな青リンゴ、コンテチーズ、香ばしいナッツを合わせたパイ包み。コースのスタートに、さまざまな味わいが詰め込まれた贅沢なひと口。

日本料理を取り入れながら、自由な発想を加えた新しい料理を

【秋祭り 〜毛蟹・鮑・カリフラワー〜】蟹味噌で和えてふんわりと仕上げた毛蟹と、コリコリとした生の鮑、プチプチと弾けるイクラに、なめらかなカリフラワーのムースと鶏のコンソメのジュレ。あらゆる食材の旨みと食感が祭のように賑やかに踊る一皿。

日本人として「日本」を意識する中で、後藤さんが取り入れたのが懐石料理。「そもそもフランスでも、以前は2〜3皿のコースで大盛りの料理を食べていたのが、日本の懐石料理にヒントを得て、少量の10皿前後の料理を食べる現在のスタイルに変わりました。ですから、日本人である私が改めて日本の懐石料理を取り入れるのも、ごく自然なことなんです」。後藤さんは日本全国から厳選した食材を使い、11皿前後のコースで日本ならではの四季を表現。料理によって日本の器も使い、霧吹きで器を濡らすもてなしの演出なども取り入れています。

そして、後藤さんが料理の味わいを決める際に、キーワードとしているのが「旨味」。「従来のクラシックなフランス料理は旨味の強いものを重ねて複雑で濃厚な味わいを作っていましたが、現在、旨味は“甘味、塩味、酸味、苦味、旨味”の五味のひとつに数え、シンプルな食材の組み合わせの中で表現します。ですが、旨味は日本で生まれた概念で、繊細でシンプルな旨味は外国の方には未だに分かりづらいものでもあります。外国の方にもおいしいと感じていただけるくらいの旨味を表現したいですね。それがメイドインジャパンのおいしさですから」と後藤さんは語ります。

店で使う出汁も、フランス料理ならではの牛を使ったフォン・ド・ボーではなく、昆布やハマグリなどの出汁をメインにすることで、よりピュアで美しいおいしさ表現しています。また、「秋祭り 〜毛蟹・鮑・カリフラワー〜」では、毛蟹や鮑などの「海の旨味」に、あえて鶏のコンソメのジュレという「肉の旨味」を合わせて、口にしたときの旨味を何倍にも膨らませる工夫も。ただしここでも牛のコンソメではなく、鶏の出汁を繊細にとったコンソメを使うことで、日本の「海の旨味」とのバランスを調節。ここへさらに、日本料理にはないフランス料理のカリフラワーのムースを絶妙に加えることで、新たな味わいを生み出しています。

「日本料理を取り入れてはいますが、日本料理そのものを作りたいわけではありません。私ならではの自由な発想を加えることで、日本料理とはまた違ったピュアなおいしさを目指しています」という後藤さん。土瓶蒸しをイメージした「香り立つ 〜鱧・松茸・すだち〜」も、本来の土瓶蒸しのように出汁をとった具材をそのまま食べるのではなく、出汁をとるための材料と食べる具材を別にすることで、よりしっかりとした旨味を出しています。さらに、コースの流れの中でも、クラシックなフランス料理で濃厚な「オマール海老のビスク」のあとにすっきりとした和の味わいの「香り立つ 〜鱧・松茸・すだち〜」を出すなど、旨味の違いも楽しめるようにしています。

【香り立つ 〜鱧・松茸・すだち〜】 鱧は骨切りをせず、骨を抜いて炭火で炙りもっちりとした食感に。松茸と3種の和のキノコ、すだちが華やかな秋の香りを添える。そこへ焼いた鱧の骨などで丹念にとった出汁をかける“土瓶蒸しより美味しい土瓶蒸し”。

より多くの人に魅力を伝え、フランス料理界に活気を

日本の料理人として、日本の懐石料理を取り入れながら自身の料理の世界観をつくり上げてきた後藤さん。今後はそれを海外に向けても発信していきたいといいます。一昨年にはモーリシャスで開催された「第11回 ベルナール・ロワゾー 食の祭典」にアジアから初選出。今後も積極的に海外での活動を行う予定なのだとか。また、日本国内でも、「アムール」に足を運ばなければ食べられなかったクラシックなフランス料理の代表的メニューを、若い方たちにも気軽に食べてもらえる展開も考えています。丁寧に作られた本物の味、フランス料理の魅力を、もっと多くの人に知ってもらいたいという取り組みです。

【恋心 〜和梨・柚子〜】 和梨と柚子だけで作り上げた、軽やかな一皿目のデザート。思わず見とれてしまう可憐なバラの花びらは、柚子のシロップを染み込ませたみずみずしくしなやかな梨。柚子のソルベがひんやりと心地よく爽やかさを添える。

「私の手でつくり上げた料理でお客さまが幸せになってくださることが、私の一番の幸せでもあります」という後藤さん。「アムール」のオープンから6年目を迎え、日本人として後藤さんがその感性でつくる料理を、日本はもちろん世界へ向けて広く発信し、日本のフランス料理界を盛り上げようと日々その料理に磨きをかけています。今なお進化し続ける後藤さんの世界を、あなたの感性で味わってみて。

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AMOUR

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アムール

エリア
恵比寿
ジャンル
フランス料理
営業時間[昼]
[昼]12:00~15:30(13:00LO)
営業時間[夜]
[夜]18:00~23:00(20:30LO)
定休日

Amourアムール

営業時間[昼]:12:00〜13:00 LO 営業時間[夜]:18:00〜20:30 LO 定休日:水

住所:
150-0012 東京都渋谷区広尾1-6-13
TEL:
03-3409-1331
URL:
http://amourtokyojapan.com/

更新: 2017年11月1日

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