[Tokyo Elite Restaurant]

l'Odorante par Minoru Nakijin

Minoru Nakijin

今帰仁 実

文 :戸田千文
写真:片桐 圭

銀座の中心地にある「ロドラント ミノルナキジン」。シンプルモダンなフレンチが時流の今、変わらず古典のフレンチを追求し続ける今帰仁シェフのエスプリが感じられる、ここだけのジャポネスクなフレンチに出会うことができます。

今帰仁 実(なきじん みのる)

1970年、大阪府堺市生まれ。中学卒業後、就職した飲食店で料理の楽しさに目覚めて料理人の道へ。その後、岐阜県の「ラーモニー・ドゥ・ラ・ルミエール」で今も尊敬する山村幸比古シェフに出合い、フレンチの道を極めると決めて上京。フレンチの名店「銀座レカン」などを経てフランスに渡ったのち、帰国後、2008年に「l’Odorante par Minoru Nakijin」をオープン。「和」を意識した、ジャポネスクが感じられるフランス料理を追求する。

なんとなく就職した飲食店で料理の達成感を知る

「自分で仕上げた料理って出来上がった時に達成感が感じられて、さらに食べた人から喜んでもらえるのが嬉しくて、それでどんどん興味が出てきたんです。ほかにどんな料理があるんだろうって」。銀座にある「ロドラント ミノルナキジン」のオーナーシェフ今帰仁実さんは、料理の世界に魅了され始めたときのことをそう話します。

中学卒業後、15歳で飲食店で働き始めた今帰仁さん。とはいっても、別段、料理に興味があったわけではありません。就職先の選択肢が限られていた中、なんとなく選んだだけだったと言います。それでも厨房に入って料理を作るうちに、どんどんとその楽しさに熱中していきます。そして20歳を前に「もっとこの世界を広げてみたい」と、知人から紹介された岐阜の洋食レストランに転職。そこでフランス料理に目覚めました。

今もリスペクトし続ける山村幸比古シェフとの出会い

今帰仁さんにとって最初の転機は、洋食レストランの次に勤めることになった岐阜の人気フレンチレストラン「ラーモニー・ドゥ・ラ・ルミエール」でのこと。今も尊敬し続ける、山村幸比古シェフとの出会いでした。このころのラーモニー・ドゥ・ラ・ルミエールは、広々とした店内に、庭が見えるガラス張りのキッチン、当時にしてはとても珍しい店構えが印象に残るレストラン。さらにその店の主である山村シェフもまた、前衛的な料理を生み出す人でした。

「フレンチというと、当時はまだフランスをリスペクトして、そのまま模写することが王道という風潮がありました。でも山村シェフは違う。日本の食材にいち早く着目して、自身のフィルターを通して料理を作っていたんです。畑から取ってきたばかりの玉ネギをフライにしてみたり、小魚を料理に使ったり、海と山のものを一皿で表現したり。当時はそれがとても珍しかったんです。でも着地点は素地があるしっかりフランスを感じられる料理でした」。今の今帰仁さんが作りだす“ジャポネスクが感じられるフレンチ”の原点ともいえる料理を生み出す山村シェフ。若き今帰仁さんへの影響は大きく、山村シェフを慕い、料理談議に華を咲かせ3時間以上も話し続けたこともありました。「でも当時は駆け出しだったし、まだ古典のフレンチに憧れがあったんです。それで山村シェフの店を1年足らずで離れることを決め、上京しました」

古典フレンチを追求し上京 「銀座レカン」を経てフランスへ

東京では、当時、渋谷にあったフランス・バスク地方の郷土料理が感じられる古典フレンチを提供するお店で働き始めます。さらに休みの日には、「どうせなら東京の中でも一番レベルが高い、最高潮といわれる店に」との思いで、フレンチの名店「銀座レカン」の研修にも参加するように。勤めていた店の閉店のタイミングで、正式に銀座レカンでシェフとして勤めるようになりました。

今帰仁さんにとっての第二の転機は、ここ「銀座レカン」で起こります。当時、総料理長を務めていた十時亨シェフと親交が深かったパリのレストラン「ルドワイヤン」のシェフが、共同でフェアを開催することになったのです。

「フランス人と一緒に仕事をする機会ができた時に、その感性や仕事のスタンスに驚きました。すごく豪快かつ繊細。手際もよくて、無駄がない。ソースひとつとっても、まるで絵を描くような手際でした。そのときに日本人シェフとの壁を感じたのです」。もともと渡仏へ興味がなかった今帰仁さんですが「実際に経験しないと自分では得られない」と、1998年、28歳でフランスに渡ることを決めました。

日本の食材に貪欲なフランス人を間近にして“ジャポネスク”を考える

フランスでのスタートは、バスク地方にある「オテル・デ・ピレネー」。さらにコート・ダジュールにある「ラ・バスティード・サンタントワーヌ」などで、南フランスの郷土料理を学びます。これまで古典のフレンチにこだわり続けた今帰仁さんが、「ジャポネスク」を意識したのも2年半修業をしたフランスでのことでした。

「あるときアミューズで寿司を作ってくれないかと頼まれたんです。フランス人は日本の食材に対してすごく貪欲なんですよね。『僕はフランス料理を習いに来たのに』って、最初はジレンマを抱えていたんですけど。でも、ふと自分が日本の食材をどれだけ認識しているのかなと考えたんです」

自分はどれだけ理解したうえで、寿司が作れるのだろう――日本人なのに、日本ならではの食材や食文化のことを全然知らないのではないか。疑問を感じた今帰仁さんは、帰国後、新たに日本の食材に目を向けるようになりました。このころには、日本でもようやく日本の食材だけを使ったフランス料理が注目されるようになります。その追い風を受けながら、2008年に“ジャポネスク”が感じられるフランス料理を味わうことができる「ロドラント」をオープン。ワインだけではなく、日本酒もメニューに並ぶ当時としては画期的なフレンチレストランでした。

クラシカルなフレンチのロジックをベースにフランスから見た日本を表現

“ジャポネスク”が感じられる料理と聞いて、和食をアレンジした料理を想像する人もいますが、今帰仁さんの料理は決してそうではありません。本来、和食はそぎ落とす料理ですが、フレンチはマリアージュという言葉があるように、食材をいくつも組み合わせておいしさの組み合わせを構築していく料理です。今帰仁さんが目指すのは、そんな古典フレンチで表現する日本だといいます。

「フランス料理として、どうその食材を消化できるのかというのがテーマなんです。僕は日本人だからそのアイデンティティのために、意識しないと和食っぽく仕上がってしまう。だから、自分が学んできたフランス流をフィルターに通して作りだすんです。フランス人だったら、日本のこの食材をどういう風に扱うのかなって。フランス人から見た日本を料理で表現するんです」

関サバ/カリフラワー/コリアンダー/巨峰
関サバは10~11月中旬ごろ登場。シメサバからヒントを得た前菜は、カソナードやコリアンダーなどとともに塩漬けしたあと、ホワイトバルサミコなどでマリネに。キャラメリゼした皮目の香ばしさが良いアクセント

数種類の材料を使い、その組み合わせが生み出す複雑で奥行きのある味わいが楽しめる一皿を生み出すことを心がけている今帰仁さん。ですが、今の日本のフレンチの時流は素材の味を生かしたシンプルなフレンチです。それでもあえて“古典”にこだわるのには理由があります。

「料理はどんどん進化していますが、それにともなって素地がなくなっている気がします。僕はフランス料理の古いロジックをきちんと踏まえたうえで、料理を提供したいんです。そこを大切にしながら新しさを表現したい。そうすることで料理を通してお客さんにフランスを感じてもらいたいんです。それが、エスプリだと思います」

今帰仁さんが、フランス料理に魅了されてから追い求めてきた古典フレンチ。“古典”の中には、フランスの歴史や文化、つまりフランス料理の本質が詰まっているのです。

「フォアグラってどんな味?」 子どもの食育にも注力しキッズデーも開催

本カマス/千両ナス/ミョウガ/シェルムラ
肝や白ワインとともにココットで骨ごとローストした本カマス。その煮汁にはアンチョビを加えてソースに。パリッとした焼き上がった皮とふわふわの本カマスの身にうま味がたっぷり詰まったソースが絶妙

今後の目標を尋ねると「今やっていることを突き詰めていくこと」とストイックな答えのあとに、「お客さまと共有・共感しながら続けていけたら」とはにかみます。これまでにも、日本酒やワインと料理のマリアージュの会やフロマージュの会など、新たな食の楽しみを発見できるイベントを企画してきました。中でも今帰仁さんの声に力が入ったのは、毎月第一週の土・日曜、ランチタイムの「キッズデー」について話すときです。

コース仕立ての料理を提供するフレンチレストランでは、子どもの入店を断る店も多いもの。また、いくらお店が大丈夫といっても、子どもが騒ぐのが気になって保護者も落ち着かず、ゆっくり食事を楽しむことができない場合がほとんどです。今帰仁さんも子どもと一緒にレストランで食事を楽しみたくても、あきらめざるを得ないことがありました。そんな経験から、家族そろって気兼ねなくハレの食事が楽しめる日を用意。子どもだからと専用のお子さまランチなどは用意せず、大人と同じ本格的なフレンチコースを提供しています。

「子どもにとって、食べる機会がないものを一口でもいいから体験してもらいたいんです。フォアグラってどんな味なんだろうって知ってもらいたい。もちろん食べられない子もいるけれど、それでもいいんです。子どもたちにそういう体験をさせてあげたい。ナイフやフォークを使ってコース仕立ての料理を食べたり、サービスや店の雰囲気を感じてもらいたいなって」

ブームに流されることなく向き合ってきたクラシカルなフレンチの本質の中に、“今帰仁らしさ”を吹き込んだここだけにあるジャポネスクなフレンチ。その一皿こそが、今帰仁さんのエスプリなのです。複雑で奥行きがある食材同士のマリアージュでフランスの風を感じる特別なディナーは、忘れがたいひとときを私たちに贈ってくれるに違いありません。

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l'Odorante par Minoru Nakijin

l'Odorante par Minoru Nakijin

ロドラント ミノル ナキジン

エリア
銀座
ジャンル
フランス料理
営業時間[昼]
[昼]12:00~15:30(13:30LO)
営業時間[夜]
[夜]18:00~23:00(20:30LO)
定休日
不定休

[Tokyo Elite Restaurant]
世界に自慢したいフランス料理のシェフ


美食大国日本。
世界一の美食の街と謳われる、食都「TOKYO」。
ミシュランガイドの星の数においては世界最多を覆得し、その実力を世界に知らしめました。
ここ東京は、世界中の美食家たちを魅了するワールドクラスの実力店がひしめき合っているのです。
その中でも、グルメシーンの最前線を雄飛する、選りすぐりの精鋭シェフたちの存在。
そんな店の作り手でもある、凄腕の料理人たちが腕を振るう飲食店のことを、私たちは「東京エリートレストラン」と敬意をもって名付けることにしました。本企画はそのようなシェフたちを自信を持って世界に自慢したいという思いからはじまりました。

異彩を放つ精鋭シェフたちの背景にある物語や、様々なエピソードを綴っていきたいと思います。

Metro min.WEB編集長
渡辺 弘貴

更新: 2017年11月1日

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