[Tokyo Elite Restaurant]

RINGRAZIARE KOJI MORITA

Koji Morita

森田 晃次

文 :佐藤太志
写真:松園多聞

フレンチでキャリアをスタートし、イタリアの2ツ星ではシェフに就任。森田晃次シェフが生む、豊かな経験に裏打ちされた美食の数々は、その日のゲストのためだけに多彩な変貌を遂げます。

森田晃次(もりた・こうじ)

1969年、埼玉県生まれ。ホテルのフレンチレストランや成城「オーベルジュ・ド・スズキ」(現在は閉店)などに勤めた後、1年の会社員生活を経て、イタリアンに転身。2001年にイタリアへ渡り、フィレンツェで修業後、ヴェネト州のミシュラン2ツ星「リストランテ・ドラーダ」で2年間腕を磨く。2005年に帰国し、都内のレストラン数店でシェフを務め、有名飲食グループの統括シェフを担うなどした後、2011年「オステリア ダ バッボ」を独立開業。2015年8月に「代官山 RINGRAZIARE koji morita」をオープンする。

高校3年の時、都心の大きなホテルのフレンチレストランでアルバイトをしたことが、森田さんにとって料理の道の始まりでした。キッチンで生まれる、見たこともないようなきらびやかな料理の数々。皿洗い担当でしたが、それを「あれ、食べてみたい!」と横目で見ていたと言います。「『食べてみたいなら、料理人になればいいんだ』と思っていたのをよく覚えています。ある日、デザートを仕上げるセクションで人手が足りなくなり、チーフから『おまえ、こっち来てやってみて』と呼ばれ、急に受け持ちが変わりました。生クリームを搾り、飾り付けの仕上げをしてみると、『筋が良いな!じゃあこれからはずっとここで』と認められ、すごく嬉しかった。同じ厨房の中で働く年上のコックたちの姿を毎日見て、どんどん興味が湧いてきて、自分も料理人をやりたいと強く思うようになったんです」

ますます料理にのめり込んでいった森田さん。高校卒業したらコックになりたいと先輩の料理人に相談すると、川崎市に新しくできるホテル総料理長を紹介してもらえました。初めて本格的に包丁を握るようになり、フレンチのキッチンで前菜やスープなど様々なセクションを経験していると、あっという間に4年が経過。一通り仕事がこなせるようになると、今度は逆に物足りなくなってきます。「もっと学びたい」という気持ちが強くなり、成城にあった町場のフレンチレストランに移ります。「分業化されているホテルとは違い、一から全てを作り上げる料理の仕方に、多くを吸収させてもらいました。転機になったのは、竹芝のインターコンチネンタルホテルのフレンチレストランの立ち上げに参画し、ソースを作るソシエとして勤務した時のこと。激務が続き、腰を悪くして体を壊してしまったんです」

「宮城県産黒軍鶏ササミ肉と山形県産もって菊の最中仕立て」。紫色をした山形県産の珍しい菊をアクセントに使い、ササミ肉と混ぜ合わせて最中で挟んだ一品。軍鶏肉ならではの弾力と旨みが効いている

休職しているとスタッフ全員に迷惑をかける、もうフレンチシェフの道を諦めるしかない、というところまで追い込まれた森田さん。どうせ辞めるなら全く違う仕事をしようと、コンピューター関連の会社に入り、サラリーマンに。慣れてくると良い業績も上げられるようになってきましたが、でもそのうち、今までフレンチの料理人として経験してきたことがフラッシュバックしてきて、もう料理人をやりたくて仕方がなくなってきたそう。「嫌でやめたわけじゃないですしね。治療には通っていたけど、腰が全快することはありませんでした。結局、1年間勤めた後、自分なりに考えて、イタリアンに転向しました」

【北海道産真ツブ貝の炙りとマコモダケのチップ フィンガーライムのソース】コリコリとしたツブ貝の食感に、カリカリのチップ状に仕上げたマコモダケの香りがマッチ。酸味のあるソースが引き立て役

「フレンチはすごく仕込みに手間がかかり、長時間連続で勤務する傾向が強い。一方イタリアンは、仕込みは程ほど、ライブ感覚でその場その場で作り上げていく料理が多く、体を要所要所で休められます。腰に不安を抱えている僕にとって、ぴったりだと気付いたんです。それからは、復帰して割とすぐに渋谷の小さなイタリアンでシェフを務めることになったり、今『トラットリア シチリアーナ・ドンチッチョ』で人気を集める石川勉さんがシェフをしていた西麻布の『ラ・ベンズィーナ(現在は閉店)』で働いていろいろ学ばせてもらったり、イタリアンの経験値を積みました」

【アメリカ・ハドソンバレー産フォアグラのソテー 和歌山県産刀根早生柿のソース】アメリカ産の上質なフォアグラを厳選。とろりと甘いフォアグラに、爽やかな香りと豊潤な甘みのある刀根早生柿のソースがよく合う

イタリアに渡ったのは、赤坂のある店でシェフをしていた時、お客さまに言われたある言葉がきっかけだったとか。「テーブルに呼ばれ、『あなたの料理は素晴らしい!イタリアのどこで勉強してきたの?』と聞かれました。僕は日本で、いろんな店でほぼ独学みたいにして腕を磨いてきましたが、実はその時は本場での修業にまったく興味がなかったんです。『勉強してきたからって料理が上手くなるわけじゃない』ぐらい思っていました(笑)。」そんな森田さんに先程のお客さまは「だったら、あなたみたいな人こそ、イタリアに行くべき」と強く主張。料理のみを勉強するのではなく、イタリアで暮らし、人や考え方、文化に触れ、街並みや自然を眺め、国そのものを体感することの素晴らしさを説かれ、感銘を受け、お正月が明けて10日ほど休みがとれたのでイタリア旅行へ。「ものすごく楽しかった、こんなところで生活してみたいと思ったら最後、半年後に店を辞めてイタリアへ渡りました」

最初に勤めたのはフィレンツェにあるレストラン。ハリウッド俳優や世界的なミュージシャンが訪れる名物店。1年勤めると、言葉もだんだんわかるようになってきて、そろそろ違うお店で本腰を入れて料理を学びたいと思うようになったとか。次に働いたのが、ヴェネト州にある2ツ星の「リストランテ・ドラーダ」。標高1500mの小さな村にあるレストランで、チーズやサラミ、生ハムなどまで自分たちで作るのが特徴的でした。「ここでの経験は大きかったですね。羊の解体もやりました。そして、料理も面白かった。今では普通ですが、ソースなどをムース状にするエスプーマを取り入れるなど、クレアティーボ(創造的な料理)にも積極的でした。料理に使うからと、僕は和だしをとらされたこともあります」。2年働きましたが最終的にはシェフに就任。「でも、正直な気持ち、シェフをやりたいわけじゃなかった。『僕はここに料理を学びに来たんです』と強く訴えたら、隠居したオーナーシェフのエンツォ・デプラさんが僕のためだけに店に来てくれて、特別に料理を教えてくれました。忘れられない思い出です」

【宮崎県尾崎牛テール肉のトルッテリーニ 松茸と蓮根の土瓶蒸し風の牛テールのブイヨンスープ】ラビオリのような詰め物パスタが入ったスープ。まずはお猪口でスープを味わい、すだちを搾って味の変化も楽しめる

帰国し、大手飲食チェーンのイタリアン業態の立ち上げに携わるなどユニークな経験も。いつかは自分の店をやりたいと思い続けてきた森田さんは、2011年、「オステリア ダ バッボ」を独立開業します。初めはみんなでワイワイ楽しめる店にと、大皿のアラカルトオンリーでしたが、お客様の要望によりコースのみに方向転換。初めは5皿、だんだんと品数が増え、10皿のコースになり、評判も好調に。

【熊本県産新烏賊と鎌倉産里芋 フレッシュトマトのニョッキナポレターニ イタリア産マグロのボッタルガがけ】貝殻のようなショートパスタを使った1皿。マグロの卵のカラスミの優しい塩味が絶妙な取り合わせ

「お店は、お客さまに育てられる部分が大きいと強く思います。この『代官山 RINGRAZIARE KOJI MORITA』は、そんな僕にとっての大切なお客さまを喜んでいただきたいという思いを突き詰め、2015年にオープンしたお店です。料理はその日、そのお客さまによって変わり、16皿か、13皿のコースのみ。今まで培ってきたイタリアンの技術と、ルーツにあるフレンチのエッセンスも、僕なりに組み込んでいます。例えば、魚料理と肉料理の間に、フレンチのコースでは口の中をリフレッシュさせるグラニテを出すことが多いですが、僕はフルーツを効かせたサラダを提供するなどして、舌をリセットしてもらえるようにしています」

【イタリア・アルバ産白トリュフの自家製タリオリーニ】旬のトリュフを使う手打ちパスタはお店のスペシャリテ(白トリュフは時価でプラス料金)。30カ月の熟成を経たパルミジャーノが、味わいに深みを加える

日々変わるコースの中で唯一、定番になっているのが、デザート前の締めにお出しする、トリュフのパスタ。「オステリア ダ バッボ」時代、たまたま業者の方から強いプッシュを受けてトリュフを仕入れた時に作ったメニューが、絶賛を受けたのが始まり。まさにお客さまに求められて生まれたスペシャリテです。トリュフは全てイタリア産で、白トリュフに黒トリュフ、春・夏・秋トリュフと季節物も仕入れ、一年を通して提供。手打ちのタリオリーニを使い、ソースはシンプルにブイヨンとバターとチーズ。ただし、材料にはこだわり、特にチーズは非常に希少価値が高い、イタリアの赤牛・バッケロッセの乳から作った、30カ月熟成のパルミジャーノを使用。非常にコクがある逸品。

「僕が一番、大切にし続けていることは、シンプルに、ストレートにその食材を召し上がってもらう料理を作ることなんです。その背景には、イタリアの「リストランテ・ドラーダ」で羊をと殺した時、何日も悩み抜いた経験があります。生き物の命を奪い、その命をいただくことで人間は生きていける、そのことに気付きました。そうなったら、例えば、羊なら羊らしく、トリュフならトリュフらしく、使われている食材が味わった時にありありと思い浮かぶような料理を作りたいという気持ちになったんです」

【愛媛県産白甘鯛とユリ根のリゾット 茨城県産栗のソース】松笠焼きのように仕上げた甘鯛のウロコはパリパリと心地良い食感。ホクホクとしたユリ根の素朴な味わいに、ほっこりとした栗の味が上品に寄り添う【愛知県産無花果とイタリア産水牛のモッツァレラ 胡桃のサラダ イタリア産ペコリーノチーズがけ】肉料理の前に口の中を一新してくれる清涼感あふれる1皿。香ばしい胡桃ならではの風味が決め手になっている

【広島県三次産アナグマのコンフィ カカオ風味の赤ワインソース 五郎島金時 牛蒡 ダビデの星 宿儺南瓜 小茄子】じっくりとコンフィにしたアナグマは獣臭さを全く感じさせず、力強い旨みがほとばしる

【北海道産ボタンエビのカルパッチョ サルサアメリケーヌ イタリア産キャビアのボッタルガ添え】色とりどりのエディブルフラワーの下にはボタンエビが。甲殻類の風味を凝縮したソースにボッタルガが好相性

「改めて思うのは、まだまだ日本にも魅力ある未知の食材が数多くあること。最近、メインディッシュに初めてアナグマを使いましたが、野性味あふれる力強い味に驚かされました。現在、日本の地方では害獣駆除を目的の1つに、ジビエの処理施設の建設が推進されていて、アナグマを始めとした上質なジビエが手に入りやすくなってきています。ジビエの他にも、地方でしか採れない伝統野菜や、その地域でしか消費されない魚介など、またまだ使ったことがない食材はたくさんあります」

今後、どんなことに挑戦したいか尋ねると、森田さんらしい直球な答えが。「今は、お店の基盤を着実なものにするために突っ走るつもり。でもいつか少し落ち着いたら、定期的に地方を訪れ、様々な新しい味に出合い、自分自身で味わっては感動した食材を店に持ち帰ってお客様に提供できたら。これから僕が実現したいのは、そんなことです」

【デザートとフルーツの盛り合わせ】無花果のタルトと季節のフルーツのシャーベット、旬のフルーツを盛り合わせに。シャーベットはアイスバーの形にして提供するなど、遊び心のあるデコレーションも楽しい

森田シェフが特別なお客様をおもてなしするプライベート個室

プランの詳細を見る Powerd by OZmall

RINGRAZIARE koji morita

RINGRAZIARE koji morita

リングラツィアーレ コージ モリタ

エリア
代官山
ジャンル
イタリア料理
営業時間[昼]
[昼]12:00~15:00
営業時間[夜]
[夜]19:30~23:00
定休日
日 ※ほか不定休あり

[Tokyo Elite Restaurant]
世界に自慢したいフランス料理のシェフ

美食大国日本。
世界一の美食の街と謳われる、食都「TOKYO」。
ミシュランガイドの星の数においては世界最多を獲得し、その実力を世界に知らしめました。
ここ東京は、世界中の美食家たちを魅了するワールドクラスの実力店がひしめき合っているのです。
その中でも、グルメシーンの最前線を雄飛する、選りすぐりの精鋭シェフたちの存在。
そんな店の作り手でもある、凄腕の料理人たちが腕を振るう飲食店のことを、私たちは「東京エリートレストラン」と敬意をもって名付けることにしました。本企画はそのようなシェフたちを自信を持って世界に自慢したいという思いからはじまりました。

異彩を放つ精鋭シェフたちの背景にある物語や、様々なエピソードを綴っていきたいと思います。

Metro min.WEB編集長
渡辺 弘貴

更新: 2017年10月15日

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