[Tokyo Elite Restaurant]

mori

Shigeaki Mori

森 茂彰

文 :石井 良(Hi-bit entertainment)
写真:片桐圭(人物)

恵比寿に腰を据えて10年。1日3組限定とし、目の前のゲストと料理に集中することで最高の空間を提供している「mori」。大切な人と過ごすのにふさわしい、非日常の空間がここにあります。

森 茂彰(もりしげあき)

1976年、北海道・室蘭生まれ。辻調理師専門学校を卒業後、フランスの星付きレストランや恵比寿「タイユヴァン・ロブション」で腕を磨く。2007年に「moRi」をオープン。デイリーに使えるカジュアルフレンチとして人気を博すが、2014年に店名を「mori」に改め、非日常のガストロノミーとしてリニューアル。1日3組のゲストに力を注ぐ。

「何をやりたいのか」を自問し料理人の道へ

「ちょうど僕が高校生の頃はTV番組の『料理の鉄人』が流行っていた時期。正直に言えば、少なからずその影響を受けていたんだと思います」。地元北海道の進学校に通っていたという当時の森シェフが、なぜ料理人を目指すことになったのか。そのきっかけを、自身も思い出すように語ってくれました。「進学校だったので、進学して就職するのが当たり前の道でした。でも、なんとなく進学してなんとなく就職するのは嫌だった。だから『将来、何をやりたいんだろう』と考えてみたんです」。そうして出た答えこそが料理人という道。フランス料理を選んだのは「単純にかっこ良かったし、自分がやらないと食べることがないだろうなと思ったから。実は同じような考えで料理の道に進んだ人は、いっぱいいると思いますよ」と森シェフは笑います。

しかし森シェフのすごいところは、完遂力があるところ。やると決めたらやり抜く。その意志の強さには驚かされます。両親をなんとか説得し、高校卒業後は大阪の辻調理師専門学校に入学すると、2年目にはフランスにあるリヨン校へ。「料理人になるからには自分の店を持ちたいし、そのためにはフランスで修業をしたかったんです。学校の研修という形ですが、半年間修業してみて、もっと自分で修業する店を選びたいと思うようになりました。研修が終わる頃には『また来るぞ』と意気込んでいましたね」。そうしてさらに料理の世界にのめり込んでいく森シェフ。日本へ戻り、夢のために厳しい修業時代を東京で過ごします。

「今は耐えるとき」。必死にしがみついた修業時代

帰国後は銀座「ベルフランス」でキャリアをスタートし、その後、先輩の紹介で恵比寿「タイユバン・ロブション」へ入店。「どんな仕事でも修業時代は辛いものですけど」と前置きした上で、20代前半の修業時代は特に辛い時期だったと言います。「今ではどこのシェフも言えない言葉でしょうけれど、『お前の代わりはいくらでもいるぞ』と言われながら育ちました。辛かったですけど、逃げてもその先には何もない。だから辞めようと思ったことは一度もないです」と、ここでも持ち前の完遂力を発揮。必死にしがみつきながら、料理へ向かう姿勢やテクニック、プロフェッショナルとは何かなど、全てを学んだと言います。そういった中で生き残ってきたというプライドは、その後の料理人人生に大きな影響を与えているはずです。

その後、“学生時代のやり残し”を片付けるべく、24歳で2度目のフランスへ旅立つ森シェフ。3年間滞在する中で、さまざまな地方の星付きレストランを渡り歩きます。学生時代にはできなかった、自分で店を選ぶということ。そして訪れたことのない地方の料理に触れること。「ここからが本当のスタートだという気持ちでしたね。技術は日本で磨いて自信がついていたので、この頃はなんというか……楽しかったですね」


厳しい修業時代を乗り越えてきたからこそ、フランスで”必死になって働くこと”を楽しかったと思えた。「もちろん、単にレシピを学びに行ったわけではありません。それよりも、ソースはこうしよう、食材の組み合わせはこうかな?など、いろんなものを吸収して、自分のやりたいものを作り上げる時期でした。じゃあそうした料理をどこで出すのかといったら、どこかでシェフになるか、自分で店をやるかです。だから、日本へ戻ったら5年以内に店を出そうと決めました」。


 

仕事帰りにも寄れるようなカジュアルフレンチを目指した

27歳で帰国。仕事をしながらお金を貯め、ちょうど5年になる2007年、31歳で「moRi」をオープンさせます。今とはコンセプトが異なり、日常をテーマにした、月に2~3回足を運べるようなカジュアルなビストロノミーです。5,000円と7,000円のコースとア・ラ・カルトの設定で、技術の確かさを感じさせる料理とともに、上質なワインが破格で楽しめる隠れ家的なお店として安定した人気を獲得します。しかし、7年目に大きく舵を切ることに。コンセプトは日常から非日常へ。今の1日3組限定のガストロノミーへと一新します。

「それまで作っていたのは、ビストロノミーと呼ばれる、ビストロ料理とガストロノミーの間にある料理です。もちろん、最初から今のようなガストロノミーをやりたかったわけではありません。時代の流れもありますし、周りにいろんなお店が増えてきたことも一因です。その中で、自分がやりたいこととのギャップが生じてきたんだと思います」

それまで16あった席数を一気に絞り、1日3組にまで限定するのはかなり勇気のいること。ある意味、無謀な挑戦とも取れる一大リニューアルです。メニューも変わり、1万1,900円~3万円の4つのコースに。扱う食材もがらりと変わり、より上質な素材、より美味しいワイン、より特別な時間を演出するために、全ての力を注ぎます。「リーズナブルな食材をいかに手をかけて美味しく提供するか、というのが以前のアプローチだとしたら、今はどれだけ素材の味を生かすか、ということがテーマ。そのまま食べても美味しいものに手をかけ過ぎてしまうと、蛇足になってしまう。なので、今のコースの内容や構成を考える時には、手をかけるが、かけ過ぎて蛇足にはならないことを考えています」。

それを象徴するのが、同店のスペシャリテである「トリュフのサラダ」。グリーンカールのサラダにたっぷりとトリュフを削った一皿ですが、もともとはそこへカブや鶏ムネ肉など、いろいろな素材を組み合わせようとしていたそう。しかし、最終的に残ったのはグリーンカールとトリュフ、少量のドレッシングのみ。シンプルにトリュフの味わいを楽しむためのサラダとして完成されています。


「本当に美味しいものを突き詰めた結果、ここへ行き着きました。もちろん、シンプルに見えて手間と時間はかかっていますけどね。もう1つのうちのスペシャリテ、『ブルターニュ産オマール海老と十勝ハーブ牛のタルタル』も、いろんなものを削ぎ落としていって生まれた1皿です」

大切な人とじっくり向き合える空間づくり

ワイワイガヤガヤとした雰囲気の中での食事も楽しいものですが、30代、40代と年齢を重ねていくと、だんだんと静かで落ち着ける空間を求めるようになるもの。7年目のリューアルに合わせて、内装も変貌を遂げています。「料理だけでなく、どんな空間で、どう過ごすかというのも大切な要素です。例えば、久しぶりに集まった家族なら、じっくり向き合って食事と一緒に会話も楽しんでいただきたいですよね」。あくまでもゲストが主役というのが森シェフの考え方。カウンター越しの会話もあまりせず、一定の距離を置くようにしているのだと言います。


現在の席はテラス付きの個室が1つと、ゆとりある配置のカウンターのみ。黒を基調として、シックな内装でまとめられた居心地のいい空間が魅力です。家族との食事や会食ならば個室を。女性とのデートにはカウンターが最適。壁面にずらりと自慢のワインボトルが並んでいるので、ワイン好きなら、より楽しく過ごせること間違いなしです。

守るべきところは守る。続けていくための現状維持

リニューアルから3年。早くも今後の展望について質問をぶつけてみると、返答は至ってシンプルなものでした。「最近思うのは、“現状維持”なんです。こういう風に言うと何も考えてないと思われるかもしれないですけど(笑)。日々いろんなことを考えてやってきた結果、今があるので、実はそれを維持するのはとても大変なこと。変えないことは変えないでも、変わらないといけないことは変えて常に進化していく“現状維持”を意識しています」。オープンから今年で10年。芯の通ったこれからの「mori」には期待が高まるばかりです。

プランの詳細を見る Powerd by OZmall

mori

mori

モリ

エリア
恵比寿
ジャンル
フランス料理
営業時間[夜]
[夜]18:30~23:00(20:30LO)
定休日
日 ※ほか不定休あり

[Tokyo Elite Restaurant]
世界に自慢したいフランス料理のシェフ

美食大国日本。
世界一の美食の街と謳われる、食都「TOKYO」。
ミシュランガイドの星の数においては世界最多を獲得し、その実力を世界に知らしめました。
ここ東京は、世界中の美食家たちを魅了するワールドクラスの実力店がひしめき合っているのです。
その中でも、グルメシーンの最前線を雄飛する、選りすぐりの精鋭シェフたちの存在。
そんな店の作り手でもある、凄腕の料理人たちが腕を振るう飲食店のことを、私たちは「東京エリートレストラン」と敬意をもって名付けることにしました。本企画はそのようなシェフたちを自信を持って世界に自慢したいという思いからはじまりました。

異彩を放つ精鋭シェフたちの背景にある物語や、様々なエピソードを綴っていきたいと思います。

Metro min.WEB編集長
渡辺 弘貴

文 :石井 良(Hi-bit entertainment)
写真:片桐圭(人物)

更新: 2017年10月14日

この記事が気に入ったら
「シェア」しよう

最後までお読みいただき、ありがとうございます

pagetop