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味しい南イタリア【3】ワイン、オリーブオイル、エスプレッソ、ナポリピッツァの美味しい授業

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「イタリアに、イタリア料理はない」ように

“イタリアワイン”もない!?

「イタリアワインは難しい」。ある程度ワインを飲む人でも、品種の多さや、その味わいの多様さから、難解に捉えられがち。さらに南イタリア限定とくれば、頭の上に「?」が並んでしまうのでは?ここはひとつ、その道の達人に教えを乞い、新たな美味しさとの巡り合いを期待したい! イタリアの文化団体の会長であり、ワインについての著書でも知られるファブリツィオ・グラッセッリさんに、南イタリアのワインの現在を聞きました。実はとっても気軽で楽しいものだったのです。

 

イタリア人にとってワインはとても特別なものであるとともに、ワインにとってもイタリアという国は特別な国であること、ご存知でしたでしょうか? ワインが日常の飲み物となった、約3000年前の古代ローマ帝国から現在に至るまで、一度も途切れることなくワイン造りが行われてきたのは、世界中を見渡してもイタリアのみ。ほとんどの国では、戦争や、戒律で飲酒が制限されるイスラム教の普及により、一度中断したり、途絶えているのだそう。そしてこの長い歴史こそ、圧倒的な数のブドウ品種の存在によって味も個性もさまざまなワインが作られる、イタリアワインの"多様性"という特色を生んだのです。さて、では南イタリアのワインというと、どんな傾向があり、どんな代表銘柄があるのでしょう?

「厳密にいうと『ない』んです」とグラッセッリさん。むむ、しょっぱなから不安なお答え。でもそれにはちゃんと理由がありました。「北にイタリアワインを代表するバローロやアマローネといった超有名ワインがあるのに比べ、南にはそういうワインがありません。南のワインは、人々にとって、よりデイリーなもの。ナポリなどの大都市では『エノテカ』と呼ばれるきちんとしたワインショップがあり、イタリアはもちろんフランスワインまで揃っていますが、それは一般的ではなく、ワインはもっとローカルな存在なんです」。

元々、豊かな都市国家の文化がベースにあり、経済的に豊かだった北部に対し、農業以外の主要産業が長いことなかった南部。北で品質を重視したワインが求められたのに比べ、南はワインを量産する地域だったそう。現在でも生産量自体は南の方が多く、その分生産者も多い。ただ、たとえ同じ品種を使っていても、作り手によって驚くほど味が違うので、いい生産者を見極めることが大切なのです。「ですから、一概にこのワインがいいとか、この品種を飲めという言い方をすると、がっかりさせてしまうこともあるんですよ」。

そんな中でも、グラッセッリさんが太鼓判を押すワインがひとつあるのだとか。「私が"南のバローロ"だと思うのは『チロ』。数百年前から続くとてもトラディッショナルなワインで、タンニンが強いけれど優しく、心地よい飲み口があってエレガントです」。この「チロ」、美味しいけれど、もっとも美味しいものに日本人はまだ出合っていないはず、とグラッセッリさん。なぜなら、日本での知名度が低く、未だにごく一部しか手に入らないため。「もっと知られるようになればと思います。ただ心配なのは、最近のシチリアワインブームなどで、南イタリアのワインの価値が見直されると同時に、歴史や伝統との繋がりを失った"インターナショナル"なものが増えたこと。国際的なマーケットに合わせ、カリフォルニアワインのような飲みやすいものや、フランス風にオーク樽で熟成させたワインが目立ちます」。

選び方がとても難しく、ソムリエでさえ、北のワインには詳しくても、南となると判断を誤ることも多いとか。では、どうすれば南イタリアワインと仲良くなれるんでしょうか。「なにより自分で飲んで、自分のお気に入りワインリストを作ること。今回は5本のおすすめを選びましたが、これはあくまできっかけ。『覚えるより飲め』を実践してください」。自分の感覚に聞いてみる…そう捉えると、南イタリアワインってとてもプリミティブ。それは、ブルゴーニュならこれ、ボルドーならこれと頭で考えがちなフランスワインより、感覚的なものだと言えそうです。「今はスマートフォンのカメラもありますし、ラベルの管理もしやすいですよ。一から自分のリストを作る楽しみは、南イタリアワインならではかもしれません」とグラッセッリさん。早速、今宵のディナーのお供に、気になる一本を仕入れたい!

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こちらの写真は「チロ」の名生産者、「サンタ・ヴェーネレ」の風景。カラブリアの地で1600年からブドウ栽培を続ける、歴史あるワイナリー。現在はイタリア有機農業協会の規定に基づくビオロジック栽培を行う。豊富な日照量に加え、畑のそばを流れる急流が適度に気温を下げることにより、ゆっくりとブドウが育つ恵まれた栽培環境。ちなみに、ワイナリー名はその急流の名前から取っているそう

 

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ファブリツィオ・グラッセッリさん
建築家として各国で活躍後に来日、約20年東京に在住。イタリアで最も古い伝統と権威を持つ文化団体「ダンテ・アリギエーリ協会」東京支部の会長を務め、同団体の設立したイタリア語学校の校長でもある。

イタリアワイン秘ファイル帯あり南イタリアのワインもっと知りたいなら…
ときに優しく、ときに辛口に「ワインの愛し方」を伝授する、グラッセッリさんの著書。日本人の「間違いだらけのワイン選び」を一蹴し、「マーケットの論理」に左右されない楽しみ方を教えてくれる。もちろん南イタリアのワインも登場。今回紹介した5本を含む、おすすめワイン100本のリスト付き。
イタリアワイン㊙ファイル 文藝春秋 810円

 

 

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