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る「和食」【2】食べて学ぶ本当の「和食」

東京(近郊)の名店をめぐりながら

食べて学ぶ本当の「和食」

「和食」が「日本の伝統的な食文化・和食」と言えるのは、下の4つの特徴が備わっているから。
日本の豊かな自然の恵み"食材"、趣向を凝らした"料理"、健康的な"栄養"、食の場を覆う"もてなし"。これらをそれぞれ頭に入れていただいたなら、さあ、実際に心身共に「和食」を体験できる名店へご案内いたしましょう。

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 主人からお客へのサービスだけでなく、お客の側からも主人への心配りもあることなど、食の場のふるまい全体に関わってくるのがおもてなし。器や生け花などを設え、季節感も大切にする。

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 動物性油脂が少なく低カロリー。生活に必要なエネルギーや栄養素が理想的なバランスで備わっている。行き過ぎた贅沢を抑制するために安土桃山時代に生まれた「一汁三菜」を基本とする。

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 素材の味を最大限に引き出すための調理法、考え抜かれた調理器具を用いて作られた料理。特に、「和食」の要は出汁。最後の盛り付けに至るまで、日本人ならではの工夫と知恵が詰まっている。

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 世界的に見ても、これだけ多種類の魚介類が獲れるのは貴重だという環境。また山の幸も豊か。四季折々の季節感を尊重し、それぞれの地域に根付いた新鮮な食材を料理に生かすことができる。

 

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上:7,400円のコースより。セリのおひたし(右下)、クエの刺身(中央下)、マナガツオの照り焼き(左下)、湯葉と蛤のかぶら餡(右上)、白子の湯葉揚げ(左上)。内容は日によって変更あり 右下:重島さんが最も敬愛する人間国宝であり名工陶芸家の故・石黒宗麿氏ほか、著名な陶芸家の器を多く揃える。ちなみに店名は石黒氏の雅号「栩翁」と石黒の石(stone)のSで「栩翁S」と名付けた 左下:無農薬で育てられた熊本の「おあしす米」の炊きたてご飯、金山寺味噌、お吸い物。ご飯セットのために特注で作ったという専用のお盆にのせていただく 下中:〆は店主自ら点てたお茶と和菓子。茶碗は唐津焼陶芸家・田中佐次郎氏作

 kuou栩翁S(くおうえす)
03-6805-0856 東京都港区南青山7-14-6南青山TCビル1F 18:00~24:00(23:00LO) 日・祝定休

 

無駄を取り除いたシンプルな料理と器の妙
“わび・さび”の境地で和食の真髄を味わう

まるで美しい球体のようにすべてが調和している。何かが突出するのではなく、もてなし、料理、栄養、食材など和食の特徴がバランスよく揃っているのが、2年前にオープンした南青山の「栩翁S」。

 店主の重島友和さんは「どれか1つ欠けても、うちの料理は成立しない。材料にいくらお金をかけても、良い調味料を使い、しかるべき調理法を施さなければ素材が台無しになりますし、出来上がった料理を盛り付ける器が低廉なものだったら美味しさが半減します。すべてにおいて使うものの質を落としたくないと考えています」と語る。

 刺身のクエは旨みを引き出すために3日間ほど熟成させ、照り焼きのマナガツオは紀州の備長炭で何度もタレをかけながら時間をかけてふっくらと焼き上げる。調味料は素材に合ったものを使い、刺身醤油1つとっても魚と相性が良いか、吟味するという。

 器に対しても手抜かりはない。重島さんが10年以上かけて集めた人間国宝の名工陶芸家、故・石黒宗麿氏や唐津焼陶芸家の田中佐次郎氏、北大路魯山人氏など著名な陶芸家の小鉢や皿、茶碗など一級品のみを揃えている。それを惜しげもなくお客に使う心意気が嬉しい。料理がより美しく際立ち、見た目も楽しむことができるのだ。料理を食べ終わった後も眺めているだけで気持ちが豊かになるほど、秀逸な名品ばかりが並ぶ。

 とは言え、華美とはまた違い、無駄なものを取り除いた洗練の美。日本人の美意識を象徴している〝わび・さび〟の境地を実感できるのだ。

「常にシンプルでありたい。素材のミネラル感やエネルギーを生かすためにも、いいものには過剰な手を加える必要はないと思うのです。そして、1つを味わって満足するのではなく料理、器、空間などすべてを通して初めて完成するような〝余白の美〟の世界観をお客様に感じていただけたらと。私が崇拝する名工陶芸家の石黒先生の哲学である〝見えないものを感じる心〟を伝えていきたいのです。和食とは共存。相手を思いやる心や目には見えない、味ではない味付けが大切なのではないでしょうか。それぞれのお客様の好みや健康状態によって調理法や品書きを変えて提供する。自分の好みを押し付けるのではなく、さりげないオーダーメイドができる料理人でありたいです」

 店主の温かいもてなしを受けながら、四季折々の料理を味わい、空間を楽しむ贅沢な時間。きっと心の底から「日本人で良かった」と思えるはず。

 

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