日々をより豊かに暮らすためのヒント集
|料理家のご馳走モノ|久保香菜子さん

「馳走」とは、昔、大事な客人をもてなすために馬を走らせ、奔走し、様々な食材を調達してきたことに由来する言葉。江戸時代後半には、もてなされたことへの感謝を込めて、「御馳走様」が食後の挨拶として使われるようになったと言われています。そして、「ご馳走」と言えば「もてなし」や「豪華な食事」という意味になるわけですが…、しかしながら思うのです。モノやコトに溢れた時代に暮らす私たちのご馳走とは、“もてなし”や“豪華”に限らないのではないでしょうか。例えば、誠実に育てられた野菜、大好きな母の手料理、大切な人とテーブルを囲む時間なども、“日々のご馳走”と呼ぶことができたり。普段の食事が自分にとって“ご馳走”である、そんな風に言える暮らしに憧れて、私たちは料理家の皆さまに会いに行くことにしました。なぜならきっと料理家とは、“日々の食事”を“日々のご馳走”に成長させるアイデアを提案してくれる存在。だから様々な料理家さんにお会いして、まずは料理をする上で大切にしているモノ=食材・食品・道具など(名付けて「ご馳走モノ」)を教えていただきながら、料理のこと、暮らしのこと、話を聞いてみたいと思います。料理家たちの言葉をヒントに、皆さんも、自分にとっての日々のご馳走のこと、ぜひ考えてみてください。

笑顔と会話で満ちた空間を料理によって作りたい。

久保香菜子さんがこれまでに食べてきた料理の中で最も 心に残っているもの、それは「母の作ったニョッキ」だそう です。「当時は昭和40年代くらいで、イタリアンレストランも まだあまりない時代。そんな頃にニョッキを食べている家 だなんて、だいぶハイカラですよね。

うちのニョッキは円盤 型で、ソースはトマトソースではなくボロネーゼでした。そ れが当たり前だったので、後で本格的なイタリアンの ニョッキを見てすごく驚いたことを覚えています。母は料理 を作るのが大好きで、当時もタンシチューとかおしゃれな ものをよく作ってくれました。

でも、もっと美味しくしたいと 日々レシピの改良に励んでいたため、うちの味はこれ!と決 まった味があるわけではなかったですね」 そんなお母様の影響もあり、料理の道へ進んだ久保さ ん。昔から食べることに興味があり、食材も好奇心いっぱ いに様々取り寄せています。

今回、ご紹介いただいた「玄米 ミルキークィーン」もご自身で調べ、取り寄せてみてお気 に入りになったもの。「素敵な素材とめぐり合うためには、 まずは自分の好きなものを把握することではないでしょう か。そして、好みに合うものを見つけたらすぐお取り寄せ。 一度試しに味わってみることが大事だと思います」 久保さんのお料理は「美味しく、楽しく、美しく」という思い の下に生まれてくるもの。

味はもちろん、盛り付けの美しさ も実に見事です。「私は、きれいに盛りつけなければいけな いとは、さほど思っているわけではないんです。ただ、その 食卓の空気感に合わせてセッティングすると、居心地の良 い形になって食欲が増していきます。

そして笑顔も会話も 増え、それが美味しさを一段も二段も引き上げてくれると 思うんです。楽しい循環でテーブルがより豊かになって、笑 顔と会話に満ちた場になれば良いなと思います」

0 1 . 新潟県・小杉農場の玄米 ミルキークィーン

?2mを越える積雪から生まれた綺麗な水が育む、土地の力に満ちたお米。4代続く農家さん家族が作っています。ミル キークィーンはモチモチとした品種。冷めても美味しいため、おむすびにも最適です。久保さんは玄米を注文し、炊く日 に精米するため美味しさが格別だそう

【問】小杉農場
電話:025・779・2449
住所:新潟県南魚沼市水尾554
http://www.yukiguni-nouka.jp/(WEBで購入可)

0 2 . 京都府・山利商店の白みそ

?白みそは京都のお雑煮には欠かせないものですが、京都育ちの久保さんにとって定番は「山利商店」だそう。創業100 年を超える「山利商店」の白みそは、名だたる料亭・割烹、茶道の家元などにも愛されている逸品。かす汁や味噌漬け など、様々な料理に活用できます

【問】紀ノ國屋
http://www.e-kinokuniya.com/(紀ノ國屋各店の他、オンラインショップでも購入可能)

0 3 .フランス「エシレ」のバター( 食塩不使用)

フランスのエシレ村で1894年から続く伝統製法により作り上げられた発酵バター。木製チャーンの中で練り上げられ たバターのなめらかな口当たりと上品な味わいは、世界中の三ツ星シェフはもとより、ヨーロッパのロイヤルファミリー からも愛されています。久保さんはトーストやローストさつまいもだけでなく、生牡蠣のおともに、黒パンと無塩発酵バ ターのミルフィーユをよく作るそうです。

【問】片岡物産お客様相談室
電話:0120・ 941440
http://www.kataoka.com/echire/(オンラインショップあり)

実店舗「エシレ・メゾン デュ ブール」
電話:03・6269・9840
住所:東京都千代田区丸の内2・6・1 丸の内ブリックスクエア1F

写真は、煮物をごく静かに煮詰めたいときに大活躍するという鉄鋳物製のガスバーナープレート。ガス台の上 にのせ、その上に鍋を置けばごく弱火のとろ火で煮ることができます。鍋底全体がじんわりと熱せられるので、一箇所だ けが湧いて煮くずれたり焦げ付いたりすることもありません。

0 4 . 京都府・有次の柳刃庖丁

世界的にも有名な庖丁の店。1560年に刀工の藤原有次により創業され、京都御所御用鍛冶として長く御所の出入 りを許されていたという。素材は、昔から変わらず鋼を使用。柳刃は切れ味が鋭いため、お造りを引く時はもちろん、巻 き寿司や棒寿司を切る時にも使えます。久保さんにとっては実家にいた頃から使っていた、最も使い勝手が良い庖丁
【問】有次
電話:075・221・1091
住所:京都市中京区錦小路通御幸町西入ル(錦市場商店街内)

久保香菜子さんの食材ファイル

天然きのこ・山菜
おのか商店 [ 岩手]
一般的に流通しているものの多くは栽培ものばかり。そんな山菜・きのこの天然物を扱う、岩手県の九戸村にある店。もちろん無添加無農薬。低カロリーでビタミン豊富。事前に予約注文しておくと、採取でき次第、予約順に「採れたて」を届けてくれる。


【問】天然きのこ山菜.com(おのか商店)
電話:0195・42・2224
http://www.kinokosansai.com/(オンラインショップあり)

久保香菜子 |Kanako Kubo|

料理家 久保香菜子 |Kanako Kubo|

母親譲りの料理好きが高じて、高校生の頃から京都の老舗「たん熊北店」 にて懐石料理を学ぶ。大学卒業後、辻調理師専門学校に入学して調理師 免許などを取得。著書は『決定版 料理の腕が上がる! 基本のおかず』か ら『美しい盛り付けの基本』まで幅広く出版。料理教室も主宰している

contributing Editor&Text バブーン(矢作美和、古里文香、茂木理佳、川上萌、井上真子人)
Photo:小林修銀

※こちらの記事は2016年4月20日発行『メトロミニッツ』No.162掲載された情報です。

更新: 2016年11月7日

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