【連載】名店の主義と感性が交差する|血統の一皿[2]|
EPISODE 01 : 名店から生まれたセカンドライン
ポンドール・イノ|柚原賢シェフ

日本を代表する名料理人、名店。料理やサービス、店づくりに対する想いを受け継ぎながら、自らの〝 色? を打ち 出している。そんな名店のセカンドラインを、元となるお 店(1st)の主義と感性をお伝えしつつご紹介。まずは表紙 と前のページにもご登場いただいた、こちらのお店から。

O1「ポンドール・イノ」 フランス料理/日本橋

巨匠の志を継承し、" 感動"を売る
グランメゾン「シェ・イノ」の料理と精神を継ぐレストランとして2010年、 日本橋にオープンした「ポンドール・イノ」。その名は日本橋の繁栄を象徴 する"黄金橋"に由来する。ここで2014年より、腕を揮ってきたシェフが 柚原賢さん。グランシェフ・井上旭氏の薫陶を受けた、その料理とは?

血統の一皿

リ・スフレを添えた黒ムツのポワレ
アルベールソース(11,000円のコースより
付け合わせはセップ茸のソテーとフォン・ド・ヴォライユで伸ばした海老芋のピュレ




 

もっと美味しく。高みを目指す、飽くなき向上心

血統の一皿。そう聞いて、迷いなく「リ・スフレを添えた黒ムツのポワレアルベールソース」を選択した柚原賢シェフ。アルベールとはベルエポックに沸く19世紀のパリで創業した名店『マキシム』にかつて在籍した支配人の名。今からおよそ半世紀も前に、井上旭シェフが飛び込んだレストランです。そこで体得した味が基にはなっていますが、「シェ・イノ」のアルベールソースは、今や井上シェフのスペシャリテのひとつ。さらなる高みを目指して帰国後、「自分だったら、もっと美味しくできる」と飽くなき向上心を持って完成させたソースがアルベールなのです。「フランス人に負けないフランス料理」。これこそが井上さんの矜持。グランシェフの熱い志がこの美味しさに凝縮されています。だからこそ、柚原シェフも「ソースは崩せません」ときっぱり。ベースは白身魚の骨からとったフュメ・ド・ポワソンで、粗挽き胡椒のスパイシーさも特徴。ドライベルモットもたっぷり注ぎ入れ、じっくり煮詰めていきます。本店では舌平目のブレゼに合わせるのが定番ですが、「ポンドール・イノ」では黒ムツのポワレで応用。リ・スフレという焙煎した餅米を皮目に付けて焼き、香ばしさを醸すひと工夫も柚原シェフのアイデアです。「崩さない一方、日本で作るフランス料理の意味も深く考えながら、本店との差別化も図っていきたい」。師匠から弟子へ。向上心もしっかり継承されています。

美味しさは無論、文化まで伝えようとする心意気

(写真右)|1ST CHEF| 井上旭さん 1945年鳥取県生まれ。21 歳で渡欧し、フランスでは 「トロワグロ」、「マキシム」で修業する。帰国後、31歳で「銀座レカン」シェフ。1984年、オーナーシェフとして京橋「シェ・イノ」を開く。 (写真左)|2ND CHEF|柚原賢さん 1976年神奈川県生まれ。 料理専門学校を卒業した後に、シェ・イノグループ入 社。恵比寿にあった「ドゥ・ ロアンヌ」のシェフを経て、2014年1月に「ポンドー ル・イノ」のシェフに就任。

「ソースと素材のハーモニーこそがフランス料理」。これが井上シェフの貫く信念。柚原さんも次いで「シェフはソースの鬼。原点は守らねばなりません」と語ります。日本を代表する巨匠・井上シェフが道を志し、渡欧したのは1966年。7年にもわたって積み重ねた経験の中で、「ソースの鬼」と呼ばれる現在の礎を築いたわけですが、それ以上に学んだのは「人間性こそが料理」ということでした。だからこそ、柚原シェフにも「味覚だけでなく、自分の哲学や愛情を料理に込めて表現することで相手を共鳴させる。そこが大切で、本分を見失うことなく前進し続けて欲しい」と言います。「感動を売る」ことが料理人の本分と考えているのです。これに柚原シェフも応えます。「試行錯誤はありますが、自分を出していきたいと思っています。約8割、国産の食材を使っていますから、その個性を見極め、季節感も配慮しながら脱線しない範囲で自分を追求していきたい」。そして、「ワインと料理は夫婦。食べて飲み、双方の味が際立ったときの感激や驚きがテーブルでの会話を生み、さらに味を引き立てる」と井上シェフ。それはフランス料理が誇る文化。そこも含めて、次世代に伝えたいと願っているのです。「今のフランス料理として柚原君がどこまでやれるかが勝負。原点からブレていないか、見守ります(笑)」。ときに厳しく、ときに温かく。2人の強固な信頼関係が文化の明日を担います。

サーモンの燻製 ベルモット風味のいくらを添えて。ソースは早採れの菜の花。竹炭のチュイルもあしらった 

エゾ鹿のポワレ 胡椒風味。生の黒胡椒が鮮烈。鹿と合うフルーツソースの代わりに、仄かに甘いセルフィーユ の根をピュレにすることで独自にアレンジ

シェ・イノ

|1 S T| シェ・イノ

パリの美食家たちが集う偉大なるグランメゾン。その系譜に堂々と名を連ねる、日本が世界に誇る正統派フランス料理店。心和むハーモニーと心躍るリズムを実感する料理、会話の花が咲く優雅な雰囲気で、グランシェフを務める井上旭さんの下、今日も本物だけが持つ華麗な世界観を体現。多くのVIPにも愛されている。

電話:03・3274・2020
住所:東京都中央区京橋2-4-16明治京橋ビル1F
営業時間:11:30?14:00LO、18:00?21:00LO 日定休

Pont d'Or Innoポンドール・イノ

Pont d'Or Inno

住所:
東京都中央区日本橋室町2-4-3
YUITOビル1F
TEL:
03・3276・0002
営業時間:
11:30?14:00LO、18:00?21:00LO 日定休
URL:
http://www.pontdorinno.com/

Text:田代いたる
Photo:岡本寿

※こちらの記事は2016年1月20日発行『メトロミニッツ』No.159掲載された情報です。

更新: 2016年10月12日

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