日々をより豊かに暮らすためのヒント集
料理家のご馳走モノ|松田美智子さん

「馳走」とは、昔、大事な客人をもてなすために馬を走らせ、奔走し、様々な食材を調達してきたことに由来する言葉。江戸時代後半には、もてなされたことへの感謝を込めて、「御馳走様」が食後の挨拶として使われるようになったと言われています。そして、「ご馳走」と言えば「もてなし」や「豪華な食事」という意味になるわけですが…、しかしながら思うのです。モノやコトに溢れた時代に暮らす私たちのご馳走とは、“もてなし”や“豪華”に限らないのではないでしょうか。例えば、誠実に育てられた野菜、大好きな母の手料理、大切な人とテーブルを囲む時間なども、“日々のご馳走”と呼ぶことができたり。普段の食事が自分にとって“ご馳走”である、そんな風に言える暮らしに憧れて、今月は料理家の皆さまに会いに行くことにしました。なぜならきっと料理家とは、“日々の食事”を“日々のご馳走”に成長させるアイデアを提案してくれる存在。だから様々な料理家さんにお会いして、まずは料理をする上で大切にしているモノ=食材・食品・道具など(名付けて「ご馳走モノ」)を教えていただきながら、料理のこと、暮らしのこと、話を聞いてみたいと思います。料理家たちの言葉をヒントに、皆さんも、自分にとっての日々のご馳走のこと、ぜひ考えてみてください。

作り手を支えることが日本の食文化をつくること。

最初にお話を伺った料理家は、松田美智子さん。まず松田さんに料理を作る上で何より 大切にしているものをお聞きしてみれば、それは調味料だと言います。「“さしすせそ”は 料理の基本で、味を構成する要。どの調味料を使うかで、味が変わってしまうこともあ るのです。料理に手を抜けばそれ以上の味にはなりませんが、その場合こそ調味料がす ごく大事。たとえばお塩。醤油で味をつけると思っている人が多いようですが、どんな 料理でも醤油は風味をつけるもので、味の要はやはりお塩なんですよ。私は和食には岩 戸の塩、クリーム系の洋食にはクリスタルソルトなど料理に合わせて使っています」 調味料へのこだわりはもちろん、食材1つを選ぶにしても松田さんならではの信念が あります。「昔ながらのきちっとした作り方って、風土に合わせた工夫もされていて、ま さに日本人の知恵だと思うのです。その上、日本人はせっかく繊細な舌を持って生まれ てきたのだから、化学調味料を使った料理ではなく、そういった昔ながらの日本の食事 を大切にしないといけません。消費者側がそういう食事を支えていかないと、作り手も 減って日本の食文化全体が衰退することになってしまうでしょう」 さらに食材や調理道具は、松田さん自身が作り手に取材した上で使うものを見極めて いると言います。「私は家庭料理を作って仕事にしているので、食材でも調理道具でも 自分の中で定かでないものは使えません。だからできるだけ自分で現地を回って取材 して、良いものを選んでいます。その過程も楽しみの1つで、そこで出会う希少な作り 手さんを支えていきたいと思うのです。良いと思ったものは、料理教室でも積極的に使 いますし。そういうことが少しずつではあるけれど、日本の食文化を支える消費者を 作っていくことにつながるのではないかと思っています」 そして、「買い手には買い手の義務がある」と言う松田さん。「私が気に入っているもの の1つに和歌山県のぶどう山椒(下の写真02)があります。どうしても気になって現地 に行って味見をしたら、石臼挽きの山椒がとても美味しくて。石で挽くという昔ながら の作り方は、熱がこもらないからすごく香りを引き立てるんです。これを雑誌などで絶 賛していたらどんどん広まりました。私はただその山椒を食べたかっただけで、本当に 小さな力だったと思うんですが…。でも、このように昔ながらの方法で頑張っている作 り手さんをこれからも応援していきたい。作り手を支えるのが買い手の義務。そうしな いと日本からどんどん美味しいものがなくなってしまうでしょう? それが私の使命 だと思うのです」

0 1 . 三重県・岩戸館の「岩戸の塩」

五十鈴川と海が交じったところの塩水を汲み上げ、鉄の登り釜で15時間かけてじっくりと結晶化しま す。仕上げに焼くことで、塩化マグネシウムの苦味が旨味に変わり、甘みさえ味わうことができます。塩 分濃度が低く、マグネシウムとミネラルが多いのが特徴。
(小)125g/820円(税込)

(問)みそぎの町二見浦 塩結びの宿 岩戸館
電話:0596・43・2122
住所:三重県伊勢市二見町茶屋566・9
http://www.iwatokan.com/

0 2 . 和歌山県・山本勝之助商店の「石臼挽きの山椒粉」

明治13年に創業した老舗の紀州特産の山産物の専門店。紀州ぶどう山椒(石臼挽きの山椒粉)は、山椒の中でも粒が大きく、ほのかに柑橘系の上品な香りがするのが特徴。昔と変わらない石臼で丁寧にゆっくり挽いているため、香りを最も引き立たせこだわり抜いた辛さを味わえます。
石臼挽き 山椒粉 10g入り/648円(税48円)

(問)リアルジャパンプロジェクト
電話:0120・965・905
http://kisyu-sansyoya.com/

0 3 .イタリア「マルテッリ」のパスタ

乾燥パスタにおいては最高品質と専門家から高い評価を得てき たマルテッリのこだわりパスタ。最高のセモリナ挽き硬質小麦粉 を原料とし、昔ながらの伝統的な製法の低温自然乾燥で50時間 かけて作られます。ソースの絡みも良い。

稲垣商店 購入は「アイ・スペシャル」より
0120・09・1134
http://store.shopping.yahoo.co.jp/ispecial

 

0 4 . 京都府・菊一文字の包丁

刃渡り16cmの万能包丁。100年以上の歴史を持つ京都の老舗で、研ぎ直しなどのメンテナンスはすべて打 ち手に任せることができます。刃は薄く、切れ味は抜群。この1本で、香味を刻むことから、小ぶりの魚をおろ すことまで可能です。
(問)菊一文字
電話:075・221・0077
住所:京都府京都市中京区三条通寺町東入る石橋町14
http://www.kikuichimonji.co.jp/

0 5 . 福井県・双葉商店のまな板

イチョウの木からできているまな板。イチョウは油分が多いため水はけが良く、特に殺菌作用、抗菌作用に優れて いるという特徴があります。また、刃当たりが柔らかいため包丁を傷めにくく、弾力もあるため腕に負担がかかりにく いことも。
(問)双葉商店
電話:0776・36・3796
住所:福井県福井市足羽1・26・8
http://www.icyomanaita-futaba.com/

松田美智子さんの食材ファイル

◎豆腐・油揚げ
豆源郷 [東京]
大豆は国産大豆、にがりは石川県(能登半島)揚げ浜式 塩田にがりを使用。大豆の味を引き出すため、考えられる すべてのことを妥協することなく1丁1枚手作りしていま す。はじめの1口めは、何もつけずに大豆の旨味や甘みを 楽しんでほしいというこだわりの品。「もめん」や「きぬ やっこ」などの定番商品の他に、土・日限定の「黒豆とう ふ」など曜日限定の商品も楽しめます。

?(問)豆源郷
電話:03・3622・8087
住所:東京都墨田区石原2・15・7
http://www.geocities.jp/tougenkyoyt/

(左)「やわらもめん」は中は柔らかい絹ごし、外はしっかりしたもめん (右)油揚げは、良質な油を使用しているため油抜き不要です

たけのこ水煮ホール。原料のボイルから袋詰めの最終製品まですべ てを自社で行います

◎たけのこ
タケマン [ 鹿児島]
全国でも指折りのたけのこの名産地である、鹿児島県出 水地方で採れる掘りたての新鮮なたけのこを東京にい ながら楽しむことができます。朝掘りのたけのこを蒸して 真空パックにして届けるため、通信販売でも美味しさが 変わりません。そのまま食べても素揚げにしても美味し い。創業時より無添加にこだわっているため、安心してた けのこ本来の素材を楽しむことができます。

(問)タケマン
電話:0996・82・0671
住所:鹿児島県出水市高尾野町下水流 1184
http://www.takeman.jp/

 

松田美智子{Michiko Matsuda}

料理家 松田美智子{Michiko Matsuda}

ホルトハウス房子さんに師事し、日本料理をはじめ各国の家庭料理を学 ぶ。1984年にパーティプロデュース、ケータリング、CMのフードプロデュー スなどを手がける会社「パロル」を設立。1993年より「松田美智子料理教 室」を主宰。日本雑穀協会理事、テーブルコーディネーター、女子美術大 学講師も務める。また、『調味料の効能と料理法 おいしさの決め手はこの ひとさじにある』他、これまでに数々の料理本の名著を世に送り出している

松田美智子料理教室

恵比寿で開かれている「松田美智子料理教室」。季節感を大切にした料理を、少人数のきめ細やかな実習で学ぶ ことができます。また、松田さん自身がプロデュースして出来上がった調理道具と食器はウェブショップでも購入可能。

松田美智子料理教室

URL:
http://www.y-yachtstore.jp/lacucinafelice/

contributing E ditor&Text バブーン(矢作美和、古里文香、茂木理佳、川上萌、井上真子人)
Photo:長野陽一

※こちらの記事は2016年4月20日発行『メトロミニッツ』No.162掲載された情報です。

更新: 2016年10月3日

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